写真1 大統領選挙中のドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏のディベートの様子
出所 ‘FULL: Donald Trump vs Hillary Clinton - Final Presidential Debate 2016- Third Presidential Debate’
米国新政権でエネルギー関連政策はどうなる?
2016年11月8日(現地時間)、米国の大統領選の一般投票で共和党候補のドナルド・トランプ(Donald John Trump)氏が次期大統領に選ばれた。選挙前から過激な発言などが注目され、ドナルド・トランプ氏の政策よりも、大統領としての資質に関する報道に注目が集まっていた。
しかし、大統領に選ばれてからのトランプ氏は、選挙中とは態度を変え、ビジネスパーソンらしく現実的に政権移行に関する人事や手続きを進めている印象を受ける。
トランプ氏の公約の中では、エネルギーインフラへの優先的な投資を重視することも明言しているが、ここではエネルギー関連政策に焦点を絞り、まずはトランプ氏および民主党のヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton)氏が選挙中に掲げていた政策を比較する。そのうえで、トランプ氏が次期大統領候補となった今、公開されている情報を元に、同氏のエネルギー関連政策や関連する人事を確認し、今後の展開の可能性を確認していく。
トランプ氏とクリントン氏のエネルギー関連政策比較
〔1〕両者が真っ向から対立する政策はどこか
米国の大統領選挙期間中のトランプ氏とクリントン氏のエネルギー関連政策の違い(図1)のうち、主要なものを表1にまとめた。
図1 両者のエネルギー・環境政策の違いを掲載するサイト
表1 トランプ氏とクリントン氏のエネルギー関連政策の違い
※パリ協定とはCOP21(Conference of the Parties 21)が開催されたパリにおいて採択された気候変動に関する国際的な枠組み。産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えることなどが盛り込まれている。
出所 Clinton vs. Trump: A Sharp Divide Over Energy and the Environment by : Yale Environment 360 、Trump and Clinton on the issues: energy policy - Business Insider、米大統領選とエネルギー政策 | 住友商事グローバルリサーチ(SCGR) 等を元に著者作成
〔2〕選挙後のトランプ氏の変化
気候変動に対する立場(この観点については候補者だけでなく、党としての一般的な立場も記載)に始まり、それを背景とするパリ協定への立場、そして具体的なエネルギー源に関する政策を比較すると、両者が真っ向から対立する立場であることがわかる。
原則としてオバマ大統領の取り組みを引き継ぐ姿勢を見せているクリントン氏に対して、それらの取り組みを見直すことを表明しているのがトランプ氏である。
このように、これまでの取り組みをひっくり返すような立場を表明し、過激な政策を遂行するように思われていたトランプ氏だが、冒頭に述べたように、次期大統領に決まってからは、選挙中に掲げていた極端な姿勢を軟化させ、比較的現実的な姿勢を見せている。
例えば、表1でも取り上げた地球温暖化対策に関するパリ協定については、当選後の11月22日のニューヨーク・タイムズのインタビューにおいては、これまでのように離脱を明言することはなく「予断を持たずに考えている」と述べたと伝えられている注1。そのためトランプ氏の政策については、次期大統領に決まった後の現実的な公開情報などを元に、検証をしていくことが重要となってくる。