[特集]

パナソニックの住宅向け「新・蓄電池ビジネス戦略」

― 遠隔制御を見据えた創蓄連携システムで ‘卒FIT’ 市場をねらう ―
2017/03/06
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

時代は「地産地消」から「自産自消」へ

 パナソニックは、図2の歴史年表に見るように、86年余前の1931(昭和6)年に乾電池の自主生産を開始しているが、1994年に量産を開始したリチウムイオン蓄電池において、世界のシェアではトップレベルの企業である。

図2 パナソニックにおける電池開発の歴史:乾電池から蓄電システムまで

図2 パナソニックにおける電池開発の歴史:乾電池から蓄電システムまで

出所 Panasonic Homes & Living:住宅用リチウムイオン蓄電システム(2016年7月時点)を元に一部修正して編集部作成

 このような状況下で、パナソニックが創蓄連携システムによるエネルギー戦略を打ち出したところから、従来から言われていたエネルギーの「地産地消」はさらに進化し、エネルギーの「自産自消」注5へとダイナミックなパラダイムシフトが起きている。

住宅用蓄電システムのラインナップ

 写真1および表1に、パナソニックが住宅用として太陽光発電を活用し展開している蓄電システム商品のラインナップを示す。

写真1 パナソニックの蓄電システムのラインアップ

写真1 パナソニックの蓄電システムのラインアップ

出所 Panasonic Homes & Living:住宅用リチウムイオン蓄電システム(2016年7月時点)を元に一部修正して編集部作成

表1 写真1に示したパナソニックのリチウムイオン蓄電システムの主な仕様

表1 写真1に示したパナソニックのリチウムイオン蓄電システムの主な仕様

出所 Panasonic Homes & Living:住宅用リチウムイオン蓄電システム(2016年7月時点)を元に一部修正して編集部作成

 写真左から普及商品の5.6kWh、高容量の11.2kWh(5.6kWh×2)。その右にあるのが、1kWhという容量は少ないが、壁掛けタイプの蓄電盤。一番右は、スタンドアロンタイプの5kWhの産業・住宅用の蓄電システムで、このシステムは太陽光とも系統とも連系しないコンパクトで安価なシステムとなっている。

 表2に、代表的なパナソニック住宅用「創蓄連携システム」(5.6kWh)の詳細な仕様を示す。

表2 パナソニック住宅用「創蓄連携システム」(5.6kWh)の仕様

表2 パナソニック住宅用「創蓄連携システム」(5.6kWh)の仕様

出所 http://www.taiyoko-kakaku.jp/product/panasonic-sochikuを元に編集部作成

〔1〕住宅用「創蓄連携システム」の構成

 図3は、パナソニックが提供する住宅用「創蓄連携システム」の例である。「創(つくる)」は太陽光電池モジュールを、「蓄(ためる)」はリチウムイオン蓄電池ユニット(5.6kWh)を指している。この両者を後述するパワーステーション(パナソニックグループの登録商標)が仲介して創蓄連携システムを構成している。

図3 パナソニックの住宅用「創蓄連携システム」の例

図3 パナソニックの住宅用「創蓄連携システム」の例

出所 http://www.taiyoko-kakaku.jp/product/panasonic-sochikuを元に編集部作成

 パナソニックは、蓄電池に関してパイオニア的な企業でもあるが、住宅用創蓄連携システムについても、図2の歴史年表に示すように、東日本大震災を契機に高まる市場のニーズに応えて、2012年に業界に先駆けて商品を開発し、事業展開をしてきた(現在まで累計約1万セットを販売)。このような経緯から、現在は、蓄電池単体のビジネスというよりも、パッケージ(システム)という形でのビジネスをメインに展開している。

写真2 円筒形リチウムイオン電池(サイズ:直径18mm×高さ65mm)

写真2 円筒形リチウムイオン電池(サイズ:直径18mm×高さ65mm)

出所 Panasonic Homes & Living:住宅用リチウムイオン蓄電システム(2016年7月時点)

 具体的には例えば、前出の表1に示す、住宅用11.2kWhリチウムイオン蓄電池ユニットには、写真2に示す円筒形リチウムイオン電池(サイズ:18650セル)が351本格納されたモジュールが2個(電池は計351×2=702本)入っている。ここで、18650セルの電池サイズとは、単三電池よりも少し大きい「直径18㎜×高さ65㎜」のサイズである(電圧は1本:3.6V)。

〔2〕パワーステーションの役割

 また、前出の図3に示すパワーステーションとは、太陽光で発電した電気(電流)や蓄電池に蓄えた電気(電流)を交流に変換し、分電盤を通して、家庭内の機器に電力を供給する装置である。さらに、電力会社の電気(交流)を直流に変換し、蓄電池に充電することもできる。すなわち、太陽光発電のパワーコンディショナーと蓄電池のパワーコンディショナーを1つにしたのがパワーステーション(図4)であり、これによって電気の有効な使い方が可能となった。

図4 エネルギー自産自消時代のパワーステーションの役割(電気を「つくる」「ためる」「使う」「売る」仕組み)

図4 エネルギー自産自消時代のパワーステーションの役割(電気を「つくる」「ためる」「使う」「売る」仕組み)

※1 無線は特定小電力無線(920MHz帯)を使用
※2 パワーステーションはパワーコンディショナーの役割も兼ねている。
出所 Panasonic Homes & Living:住宅用リチウムイオン蓄電システム(2016年7月時点)


▼ 注5
自産自消:自宅で生産したエネルギーを自宅で消費することを意味する造語である。

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