[特集]

パナソニックの住宅向け「新・蓄電池ビジネス戦略」

― 遠隔制御を見据えた創蓄連携システムで ‘卒FIT’ 市場をねらう ―
2017/03/06
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

VPPへの展開:オーストラリアの事例を日本へ

〔1〕地域の蓄電池をネットワーク化して「仮想大型蓄電池」へ

 パナソニックは、2015年6月からオーストラリアで、地域の蓄電池をネットワーク化して「仮想大型蓄電池」とするVPP(仮想発電所)を見据えた取り組みを行っている。

 日本ではこのようなVPPは、現在実証実験(本誌2016年9月号特集参照)が行われており、これから立ち上がると予想される市場である。オーストラリアでは、現在世界一といわれるほど多くの太陽光発電が家庭に導入されている(図10)。

図10 なぜ、オーストラリア市場を海外の最優先市場と位置づけたか

図10 なぜ、オーストラリア市場を海外の最優先市場と位置づけたか

出所 パナソニック「住宅向け創・蓄システムご参考資料」、2017年1月12日

そのため、導入され過ぎた太陽光発電について、系統への影響を最小限にするために、太陽光発電に伴う電力の変動を吸収するデバイスとして、蓄電池が注目されている。これを実現するには、前述したように、

  1. 家の中で太陽光発電と蓄電池を連携させる創蓄連携
  2. 家の中のデバイスをきちんと制御するためのHEMS
  3. さらに、地域を安定化させるために、サーバ(クラウド)との連携が必須

となる。オーストラリアでは電力会社と連携して、電力会社のサーバ(クラウド)からの指令に基づいて、各家庭に設置された蓄電池の充放電を制御する「群制御の仕組み」ができ上がっている。このため、ある家庭に設置された蓄電池が、他の家庭などの用途に使われることに関して、今後、電力会社と家庭間でサービスの連携や契約などが必要になってくると予測される。

〔2〕オーストラリアの蓄電システムの例

 オーストラリアでは太陽光の導入がかなり進んでいるところから、すでにFITレートは低下し、PV投入による系統の不安定化が増し、電気代が非常に高騰しているという事情がある。このような流れは、今後の日本にも波及し同じような市場構造になっていくものと見られている。

 そのような背景から、電力会社は一般家庭ユーザーには、売電ではなく、できるだけ自家消費を進めたほうがトクになると推奨するなかで、電力会社の系統を安定化させたいという思惑がある。そこで、太陽光発電設備をもつユーザーに蓄電池を導入することを推奨している。

 図11は、オーストラリアの蓄電システムの例であり、基本的には、次の3つの構成要素によって複合価値を実現している。

  1. 家庭の蓄電システム(蓄電容量:8kWh、出力2kW)
  2. ネットアダプター
  3. DR-EMSソフト(デマンドレスポンスEMSソフト。パナソニックが開発)

図11 オーストラリアの蓄電システム:3つの構成要素により複合価値を実現

図11 オーストラリアの蓄電システム:3つの構成要素により複合価値を実現

出所 パナソニック「住宅向け創・蓄システムご参考資料」、2017年1月12日

 すなわち、図11の①蓄電システムに②ネットアダプターをつなげ、そして、インターネット経由で、電力会社のデマンドレスポンスEMSソフト(DR-EMSソフト)を搭載した③サーバ/クラウドシステムとつなげる。これによって、系統に都合のよい形での蓄電システムの動かし方を状況に応じて指示して、家庭の蓄電池システムの充放電を制御する、という仕組みになっている。

 このDR-EMSソフトはパナソニックが開発し、オーストラリアの電力会社のサーバ(クラウド)に導入して、システムソリューションとして提供されている。

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