[特集]

VPP構築実証事業第1年度の7プロジェクトから見えた成果と課題

― 2017年度にDRASを構築へ ―
2017/06/14
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

IoTの急速な普及とともにVPPが現実的になってきたところから、政府のERAB検討会(注1)での議論をベースに、VPPに関する実証事業が進展している。2017年4月には、第1年度目(2016年度)の「A.バーチャルパワープラント構築事業」および、最終年度を迎えた「B.高度制御型ディマンドリスポンス実証事業」(2013〜2016年度)の成果報告書が公開された(後述の表1、表2参照)。ここでは、同成果報告書の内容を整理して解説するとともに、補助金40億円を投じて実施される、2017年度以降の実証事業の全体像について解説する。

日本のエネルギー自給率向上のための再エネ導入目標とERAB検討会

 歴史的なパリ協定(2015年12月、COP21)の締結以降、国際的な地球温暖化対策(CO2削減)の取り組みが活発化している。一方、日本のエネルギー自給率は6%と、OECDの中でも世界33位注2と際立って低いこともあり、国内では再生可能エネルギー(以降、再エネ)による発電に対して関心が高まっている注3

 これに関連して、経済産業省が発表した「長期エネルギー需給見通し」注4(2015年7月16日)では、徹底した省エネ対策によってエネルギー需要の抑制を図るとともに、2030年度には再エネの導入を電源構成全体の22〜24%へ拡大する計画(エネルギーミックス)を発表した。さらにその翌日には、2030年度の温室効果ガスの削減目標を2013年度比で26%減とする「日本の約束草案」注5(2015年7月17日)を策定し、国連事務局に提出した。

 このような背景から、

(1)需要家側のスマートハウスや工場、自治体などに設置され始めている太陽光発電や蓄電池、電気自動車(EV)、エネファーム、ネガワット(節電)などのエネルギー資源(エネルギーリソース)について、(契約を前提に)いかに最適に遠隔制御するか

(2)IoTを活用して需要家群に設置されたエネルギーリソースを統合することによって、あたかも1つの発電所(VPP注6)のように機能させ、いかに系統の調整力としても活用できるようにするか

(3)電力系統への負担を軽減した形での、再エネの導入拡大による環境への適合および安定供給の確保、石油火力などの燃料費が高い既存調整力の代替による経済性向上によって、いかに3E注7を達成するために貢献できるようにするか

などを目指して、2016年1月29日に官主体のERAB検討会が発足した。

2016年度におけるVPP構築実証事業の成果

 このERAB検討会を背景に、経済産業省は、

(1)2020年に50MW以上のVPPの実現を目指して、2016〜2020年度の5カ年計画で実証事業の推進

(2)第1年度(2016年度)は、29.5億円の予算を計上して実証事業を行い、「平成28(2016)年度 VPP構築実証事業の成果報告書」(概要版)および、「バーチャルパワープラント構築事業の7つプロジェクトの成果報告書」(概要版)

を公表した(表1、表2)。

表1 平成28(2016)年度 VPP構築実証事業の成果報告書(概要版)

表1 平成28(2016)年度 VPP構築実証事業の成果報告書(概要版)

出所 https://www.iae.or.jp/2017/04/11/vpp-report-fy28/

表2 A.バーチャルパワープラント構築事業の「A-1.アグリゲーター事業」(7プロジェクト)の成果報告書(概要版)

表2 A.バーチャルパワープラント構築事業の「A-1.アグリゲーター事業」(7プロジェクト)の成果報告書(概要版)

出所 http://www.iae.or.jp/2017/04/11/vpp-report-fy28/

〔1〕13MW、約200MWhのVPPを構築

(1)VPP構築実証事業

 表1に示す「A.バーチャルパワープラント構築事業/A-1.アグリゲーター事業」については、表2に示す7つのプロジェクトによってVPP構築実証事業の取り組みが行われ、合計約13MW、約200MWhのVPPの基礎的なシステムが構築され、実証が行われた(図1)。

図1 ERAB検討会における2016年度における検討概要

図1 ERAB検討会における2016年度における検討概要

出所 資源エネルギー庁、「平成28年度ERAB検討会総括」、平成29(2017)年3月8日

(2)高度制御型ディマンドリスポンス実証事業

 表1に示す「B.高度制御型ディマンドリスポンス実証事業/B-1.一般送配電事業者が活用するネガワット取引の技術実証」については、19事業者〔アグリゲータ15社、一般配電事業者3社(東京電力パワーグリッド、関西電力、中部電力)、早稲田大学〕注8によって実証が実施された。

 合計のDR(デマンドレスポンス)容量は、延べ340MW以上に達し、そのうち成功率の高いアグリゲータは、「1時間前予告DR」「4時間前予告DR」(後述)において、成功率100%を達成するなどの成果を収めた(後述)。

 次に、公開された平成28(2016)年度 VPP構築実証事業の報告書から、「関西VPPプロジェクト」と「IoTとビッグデータを活用した先駆的VPP実証事業」の2つを例に挙げて紹介する。


▼ 注1
ERAB(イーラブ)とはEnergy Resource Aggregation Business Committeeの略。アグリゲーションビジネス(VPPビジネス)の発展に向けた官主体(経済産業省主催)の検討会。産学主体で設置されたERABF(ERABフォーラム)とも連携して、当該ビジネスの発展を支援していく。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html#energy_resource

▼ 注2
http://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2016.pdf

▼ 注3
2015年11月30日〜12月12日、フランス・パリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)は、京都議定書以来の、米中および発展途上国を含む196の国と地域が全会一致で温室効果ガスの削減に取り組む、新たな国際的な枠組み「パリ協定」を採択した。具体的には、産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑えるなど。

▼ 注4
http://www.meti.go.jp/press/2015/07/20150716004/20150716004_2.pdf

▼ 注5
https://www.env.go.jp/press/files/jp/27581.pdf

▼ 注6
VPP:Virtual Power Plant、仮想発電所。太陽光発電(PV)、風力発電、蓄電池、電気自動車(EV)、エネファーム、ネガワット(節電)など、需要家側に設置されているあらゆる分散エネルギー資源を、IoTによって統合(アグリゲーション)し、あたかも1つの発電所であるかのように機能させる仕組みのこと。

▼ 注7
3E:①Energy Security(エネルギーの安定供給)、②Economic Efficiency(エネルギーの経済効率性の向上)による低コストでのエネルギー供給、同時に、③Environment Conservation(環境保全:環境への適合。再エネの活用など)を実現すること。さらにSafety(安全確保)を含めて「3E+S」という場合もある。

▼ 注8
アグリゲータ15社:
Comverge Japan、大崎電気工業、エナリス、大阪瓦斯、関西電力、NTTファシリティーズ、東京電力エナジーパートナー、東芝、丸紅、東邦ガス、グローバルエンジニアリング(関西エリア)、京セラ、グローバルエンジニアリング(東光高岳と共同)、三菱電機ビルテクノサービス、アズビル。
(※グローバルエンジニアリングは、東京電力エリアでは東光高岳との共同事業者として参画し、関西電力エリアでも実証事業を行っているなど重複してしているので、14社と数える場合もある。また同社は、中部電力エリアにおいて東邦瓦斯との共同事業者ともなっている)

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