2017年8月から実証実験をスタート
NEDOとIHIは、海流エネルギーを利用して発電する新たな再エネ技術「水中浮遊式海流発電システム」である100kW級実証機「かいりゅう」を、IHI横浜事業所で完成させ、発表した(表1)。
表1 海流発電システムの記者会見への出席者(2017年7月7日、敬称略・順不同)
NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
出所 発表資料をもとに編集部作成
「かいりゅう」は、2017年8月中旬から鹿児島県十島村口之島沖の黒潮海域で、実際の海流を利用した100kW規模の海流発電システムとしては世界初となる実証試験を行う。
NEDOは、エネルギーが強く、変動が少ない海流エネルギーを、新しい再エネ源として位置づけ、離島などでの実用化を目指すとともに、エネルギー・セキュリティ(エネルギーの安定供給)への貢献を目指している。
また、共同研究相手のIHIは、今回の実証試験によって発電性能や姿勢制御システムを検証し、海流エネルギーを有効かつ経済的に利用する「水中浮遊式海流発電システム」を2020年に実用化することを目指している。
世界各国の海洋エネルギー導入状況
海洋のさまざまなエネルギー(海流、波力、海洋温度差など。後述)を利用した発電技術は、新たな再エネとして世界的に期待されており、表2に示すように、すでに全世界で導入されている海洋エネルギーの総発電容量は530MW(53万kW、表2左側)に達し、さらに合意が得られている計画容量は580MW(58万kW、表2右側)に達している。
表2 各国の海洋エネルギー導入状況(OES:Annual Report 2015)
OES:Ocean Energy Systems: 海洋エネルギーシステム実施委員会。国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の海洋エネルギーシステム実施委員会(OES)のこと
OTEC:Ocean Thermal Energy Conversion、海洋温度差発電
(注)単位:1MW=1000kW、100万kW=1000MW、240,000kW=240MW
出所 https://report2015.ocean-energy-systems.org/、およびhttp://www.nedo.go.jp/content/100799814.pdf
表2からわかるように、再エネの導入普及に積極的に取り組んでいる欧州では、波力・潮汐発電を中心に導入・実証試験が進められているが、最近では中国や韓国などのアジア地域でも積極的に推進されている。
1966年から発電を開始したフランスのランス潮汐発電所(最大定格出力24万kW)が有名であるが、2011年から発電を開始した世界最大の韓国の始華湖(シファホ)潮力発電所(最大定格出力25.4万kW)では、さらに多くの導入が計画されている。
▼ 注1
NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構。1980年設立。所管は経済産業省。「エネルギー・地球環境問題の解決」と「産業技術力の強化」という2つのミッションを掲げて技術開発・実証に取り組んでいる。
▼ 注2
海流と潮流の違い:「海流とは」沖合を同じ方向(一方向)に流れる潮の流れ(例えば「黒潮」)のことを指し、「潮流とは」海峡や瀬戸を流れる潮(潮の満ち引きに合わせて流れの方向が逆転する:双方向)のことを指す。