[クローズアップ]

東北電力と仙台市がVPP実証プロジェクトを開始

— 仙台市内の指定避難所のうち25カ所を対象 —
2018/05/01
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

実証プロジェクトのスケジュール

 図5に、本VPPプロジェクトの具体的なスケジュールを示す。主な内容は以下の通りである。

  1. 実証期間は、2018〜2020年度までの3カ年を予定
  2. 2018年3月に東北電力内に設置された「VPP実証タスクフォース」を中心として、2018年度上期までに、具体的なシステム構築や実証に参加するメンバーの募集(エネルギーリソースの選定)を行う。
       その後、企業・大学・自治体などの多様なビジネスパートナーと連携を図りながら、具体的な実証を進めていく。
  3. 実証を通じて獲得した成果を踏まえ、順次、具体的なサービスの提供を開始する。

 なお、実証に先立ち、2018年3月から、東北電力の研究開発センターにおいて基礎実証(家庭用蓄電池や電気自動車等の性能評価など)を開始している。

仙台市と東北電力の取り組み

〔1〕仙台市と東北電力の連携

 以上述べたように、プロジェクトはスタートしたばかりであるが、仙台市と東北電力は、2018年4月24日に、VPP技術を活用して、太陽光発電設備や蓄電池の最適制御を通じた地域防災力強化や、環境負荷低減の実現に向けて、連携した取り組みを開始した注4

 仙台市では、2011年3月11日の東日本大震災の経験を踏まえて、災害時における電源の確保や、二酸化炭素排出量の削減を図るため、すでに市内のすべての小中学校を含む指定避難所などに、太陽光発電設備と蓄電池を導入している。

 また、防災性・環境性のさらなる向上を図るため、こうした設備の効率的な運用にも継続して取り組んでいる。

 一方、東北電力では、IoTやAIなどの新たな情報技術の進展による事業環境の変化に対応するとともに、顧客サービスのさらなる向上や、将来の事業領域の拡大につながる新たなビジネスモデルの構築に向けて積極的に取り組んでいくことなどを目的に、前述した「VPP実証プロジェクト」を開始している。

〔2〕VPPプロジェクトは仙台市の分散電源を集約

 今回の取り組みでは、仙台市が保有する太陽光発電設備と蓄電池などの分散電源を、東北電力の「VPP実証プロジェクト」におけるエネルギーリソースとして集約するとともに、設備の稼働状況などを遠隔監視・最適制御する。

 そのうえで、VPPを電力需給バランスの調整機能としての活用や、太陽光発電の余剰電力の有効活用・蓄電池の長寿命化注5を実現する「防災環境配慮型エネルギーマネジメント」の構築に向けた検証などに連携して取り組んでいく。

 今回の取り組みを通じて、仙台市では、防災環境都市の実現に向けたより一層のまちづくりを推進していく。一方、東北電力では、引き続き新たな情報技術の活用による取り組みを通じて、地域や顧客への新サービスを開発していく。


▼ 注4
東北電力は2018年4月27日に、仙台市と「仮想発電所技術を活用した防災環境配慮型エネルギーマネジメントの構築に関する基本協定」を締結。

▼ 注5
蓄電池の長寿命化:一般的に蓄電池は、満充電の状態が続くよりも、最適な充放電を行うことによって性能が維持され、長寿命化が図られるとされている。

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