[スペシャルインタビュー]

シーメンス株式会社 代表取締役社長兼CEO 藤田 研一氏に聞く!シーメンスのVision2020+と日本における事業戦略

— デジタル化の中核はMindSphereとデジタルツイン —
2018/10/01
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

ハードウェアビジネスとソフトウェアビジネスの関係

—編集部 なるほど。しかし、お話を聞いていると、シーメンスのハードウェアビジネスとソフトウェアビジネスの関係が今ひとつ見えないのですが。

藤田 はい、それはとても大事なところです。MindSphereの売りは、基本的にオープンアーキテクチャであること、さらにAPIも含めて、すべてオープンにして提供していることです。また、シーメンスのデジタル化の要の1つは、ソフトウェアだけではない点です。シーメンスのソフトウェア分野(デジタル化分野やサービス分野も含めて)の2017年の売上は6,800億円ぐらいありましたが、実は、これはシーメンスの全社の売上11兆円(前出の表1参照)の5%強程度で、全体の10%にも満たないのです。残りの95%はハードウェアが稼いでいるのです。

 シーメンスのもち味というのは、実は、ハードウェアから、IoTプラットフォームやソフトウェアを用いて、データを吸い上げるコネクティビティのところにあると思っています。

 デジタル化というのは、決してソフトウェアとイコールではありません。デジタル技術を使って、ソフトウェアとハードウェアをいかに融合させて使っていくか、あるいは共存させて使っていくかということが重要になるかと思います。

インダストリー4.0に対応した工場の例

—編集部 よくわかりました。ところで、インダストリー4.0に対応し、MindSphereやデジタルツインを導入した工場の例などはありますか?

藤田 写真1は、世界に250カ所以上もあるシーメンスの工場の中で、代表的なドイツのバイエルン州アンベルクにある制御系の電子機器製造工場の外観です。この工場はインダストリー4.0に対応し、MindSphereやデジタルツインも活躍している工場です。

写真1 インダストリー4.0対応のドイツ・アンベルク(Amberg)電子機器製造工場

写真1 インダストリー4.0対応のドイツ・アンベルク(Amberg)電子機器製造工場

出所 シーメンス「The Digital Enterprise EWA- Electronics Works Amberg」

 今から28年前の1990年(1989年完成)から、製造を開始していて、現在も、当時とほぼ同じ従業員数ですが、製造開始時に比べて、生産性が13倍も伸びています。それが実現できたのは、工場がフルデジタル化されており、工場内のデータをすべてリアルタイムにモニタリングし、制御しているからです。製品にはほとんど欠陥がなく、99.9999%という高い品質(1日)が維持されています。アンベルク工場では、実際には1,200種類の製品がありますが、そのうち120種類以上の製品バリエーションを1日で組み替えることが可能となっています。加えて、1日に350回の製品仕様の変更も可能で、多品種小ロット生産が可能な先進的な工場となっています。

 図7は、アンベルク工場における、MindSphereとサードパーティ製アプリケーションで構成する環境下での、サプライチェーン(図7上部)とデジタルツイン(図7下部)の例を示したものです。

図7 シーメンスアンベルク工場のサプライチェーン(上部)とデジタルツイン(下部):写真の下部左がデジタルの世界(バーチャル)、右がリアルの世界

図7 シーメンスアンベルク工場のサプライチェーン(上部)とデジタルツイン(下部):写真の下部左がデジタルの世界(バーチャル)、右がリアルの世界

出所 シーメンス「The Digital Enterprise EWA- Electronics Works Amberg」

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