横浜町のプロフィール
表1 青森県横浜町のプロフィール(敬称略)
出所 各種資料をもとに編集部作成
図1 青森県横浜町の位置
〔1〕青森県内でも1位、2位を競う風の強い町
青森県横浜町(表1)は、図1に示すように、下北半島の首位部にあり、陸奥(むつ)湾に面した臨海山村である。町名は海岸線(浜)が23kmと長いところから命名された(写真1)。
東部は東通村(ひがしどおりむら)や六ヶ所村(ろっかしょむら)と隣接し、北はむつ市、南は野辺地町(のへじまち)と隣接している。夏はこの地域特有の東風「やませ」、冬は陸奥湾を吹き抜ける西風が強い地域で、青森県内でも1位、2位を競うほど風の強い町である。
横浜町の主な産業は第1次産業であり、半農半漁による経営が多い。漁業は、ホタテの養殖や「横浜なまこ」が特産品であり、農業の特産には、じゃがいもや長芋などがある。また、じゃがいもの裏作である「菜の花」は町のシンボルで、毎年5月に開催される「菜の花フェスティバル」は、観光イベントとしてまちづくりにも大きな役割を果たしている。
写真1 再エネ電力の受給開始式(2019年9月5日)が行われた横浜町役場の建物の外観
出所 編集部撮影
〔2〕風力による「デンキ」を新たな特産品へ
横浜町は表2に示すように、「住みたい町を自分で創る地域の再生」を目標に、2015年10月、再エネ施設の立地促進などを含む2016〜2020年度の5年間計画『横浜町人口ビジョン及び総合戦略』(通称:横浜町総合戦略)を策定した。さらに、2018年3月には、「横浜町再生可能エネルギー基本計画」(最新改訂版)を発表するなど、風力発電を核とする再エネの開発戦略を強化し、横浜町の風力による「デンキ」を特産品として位置づけ、全国的なビジネス展開に乗り出した。
表2 脱炭素社会に向けた横浜町と横浜市の主な動き
※地域循環共生圏:各地域がその特性に応じた地域資源を生かし、自立・分散型の社会を形成しつつ、近隣地域と地域資源を補完し支え合うことで、地域を活性化させるための考え方。第五次環境基本計画にて提唱。
出所 各種資料から編集部で作成
今回の横浜市との連携協定もこの戦略の一環であるが、同連携協定に基づいて、各連携先の市町村(後出の表4)との協議が進められており、より多くの再エネ電力を横浜市に提供していく努力が重ねられている。
受給開始式で挨拶に立った横浜町の野坂 充(のざか みつる)町長は、「今回、横浜市さんと協定を締結した横浜町は、風力の開発が盛んで、すでに町内で22基の風力発電が稼働しています(表3)。このうち14基(合計32.2MW)は、町営の発電事業です。さらに、2年後の2021年4月の運転開始を目指して、現在、町営による12基(合計43.2MW)の風力を新たに着工しています。これらを通して、横浜町は現在の食料基地に加えてエネルギー基地としても、発展させていきたい」と、再エネを横浜町の新しい産業に発展させていくことをアピールした。
なお、20年間における民営8基分の税収は約2億円であり、町営14基分の雲雀平の税収は約10億円と見込まれている。
表3 横浜町の風力発電の一覧(赤枠は町営)
出所 各種資料をもとに編集部作成
▼ 注1
・SDGs:Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標。2015年9月に国連で策定された、2016年から2030年までの世界の長期目標。「貧困の撲滅」「気候変動」「海洋汚染への対処」など17のゴール(目標)と、169項目のターゲットが掲げられている。
・パリ協定:2015年12月にパリで開催されたCOP21(第21回国連気候変動枠組条約締約国会議)で採択され、2016年11月に発効された、2020年以降の地球温暖化対策の新しい枠組み。