【7周年記念】世界の脱炭素化の現状 2030年、最大32ギガトンもの削減量不足が判明
― 1.5℃/ 2℃温度目標と国別目標とのギャップ ―2019年12月12日 0:00
2015年は、9月に「SDGs」、12月に「パリ協定」という、2つの国際的な合意が行われた年であった。
その後4年間、世界は極端な気温の寒暖、頻繁な集中豪雨による洪水や大型ハリケーンや台風の到来など、異常気象による災害や森林破壊、河川の氾濫など、生態系での異常現象を体験してきた。地球温暖化による異常気象は、多くの災害を生み人々に多大な被害を与えてきた。
地球温暖化に伴う脱炭素化への問題は、もはや環境だけでなく、人々の生活や企業存続にも影響を及ぼす、社会全体の深刻な問題となってきた。地球温暖化対策への関心は国際的に高まり、省エネや再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入、EVシフトなどの取り組みが開始されているが、まだ十分とは言いがたい。
ここでは、改めて地球温暖化とは何か、現状はどうなっているのか、その実態を見ていく。
地球の温暖化とCO2濃度分布の観測結果
〔1〕地球温暖化のメカニズム
図1に示すように、地球温暖化は、地球と太陽の間にある大気の層にたまる、室温効果ガス〔主にCO2(二酸化炭素)〕の原因によって引き起こされる。
図1 地球温暖化のメカニズム
【地球温暖化のメカニズム】
① 太陽からのエネルギーで地上が温まる。
② 地球には大気の層があるため、地球表面から戻ってきた赤外線(一部は宇宙空間に放出される)は、地球を覆う大気に蓄積される。
③ その大気に蓄積されたエネルギーが再び地球表面に戻ってきて、地球表面付近の大気を温める。この現象は温室効果といわれる。この温室効果をもたらす「気体」が、大気中に含まれる「温室効果ガス※」である。
④ 温室効果ガスは、地球表面から戻ってくる赤外線を吸収し、再び放出する性質がある。
⑤ 石油や石炭(化石燃料)等を燃やしてCO2などの温室効果ガスの濃度が上がる。
⑥ ⑤により温室効果がこれまでより強くなり、地上の温度が上昇することになる。これが地球温暖化である。
⑦ CO2は大気中に長く滞在するため、過去の排出した分が大気中にたまり続ける。さらに濃度が高くなるのに比例して地球の平均気温が上昇し、人間や生態系への影響が大きくなっていく。
※主な温室効果ガスの種類:二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン(HCF)等がある。
出所 環境省
この室温効果ガスは、地球表面から戻ってきた赤外線エネルギー(一部は宇宙空間に放出される)を吸収して蓄積され、そのエネルギーを再放射する性質をもっている。このため、石油や石炭(化石燃料)などを燃やしCO2などの温室効果ガスの濃度が上がると、温室効果がそれまでより強くなり、地上の温度が上昇することになる。
これが、地球温暖化のメカニズムである。
〔2〕CO2濃度分布の観測結果
人類は、産業革命(1750年前後)以来、石油や石炭などの化石燃料を燃やしてエネルギーを取り出し、社会・経済を発展させてきた。その結果、大気中のCO2濃度は、産業革命前に比べて40%も増加したといわれている。
図2は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)が観測した、2009年7月、2013年7月、2018年7月における世界のCO2濃度分布の観測結果を示しており、図2の左から右へCO2濃度の分布が増加している傾向を見ることができる。
図2 GOSATによる世界のCO2濃度分布観測結果(図の左から右へCO2濃度が増加し続けていることがわかる)
GOSAT:温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」。温室効果をもたらす二酸化炭素やメタンなどの濃度分布を宇宙から観測するため、2009年1月23日に打ち上げられた。
「いぶき」はJAXA(宇宙航空研究開発機構)と環境省の共同開発プロジェクト。
出所 環境省
また、表1には、本記事に登場するCO2や炭素トン、CO2換算トン(CO2e)などの意味を解説しているので、参照していただきたい。
表1 記事中の二酸化炭素(CO2)と炭素トン、CO2換算トン(CO2e)の用語解説
出所 http://www-gio.nies.go.jp/faq/ans/outfaq2a-j.html
https://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/kagakukiso/archive/kagakukiso_18.pdf
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