[特集]

【7周年記念】世界の脱炭素化の現状 2030年、最大32ギガトンもの削減量不足が判明

― 1.5℃/ 2℃温度目標と国別目標とのギャップ ―
2019/12/12
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

パリ協定の採択とその後の主な流れ

〔1〕温室効果ガスの排出量をゼロへ

 地球温暖化を防止するために、世界197カ国・地域が合意し採択された新しい枠組みが、パリ協定である。パリ協定では、産業革命以降の世界の気温上昇を2℃より十分低く抑える(努力目標:1.5℃以下に抑える)という、世界共通の長期目標を定め、21世紀後半には人間による温室効果ガスの実質的な排出量をゼロにしよう、という合意がなされた。

 パリ協定の実現に向けた、その後の主な流れを示すと、次のようになる。

  1. 2015年12月:パリ協定採択(COP21)注1
  2. 2016年11月:パリ協定発効
  3. 2018年10月:IPCC注2が「1.5℃特別報告書」を発表
  4. 2018年12月:「パリ協定の実施ルール」合意(COP24:ポーランド・カトヴィツェ)
  5. 2019年11月:国連環境計画(UNEP)が「2019年排出ギャップ報告書」(後述)を発表
  6. 2019年12月:スペイン・マドリードでCOP25(12月2〜13日)を開催
  7. 2020年 1月:パリ協定が始動

〔2〕日本政府の取り組み

 パリ協定実現に向けた国際的な動きに対して、日本政府は、2019年6月、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定して発表した注3

 ここで、日本のこれまでのパリ協定に関する取り組みを整理すると、次のようになる。

  1. 2015年7月に、国連に約束草案(NDC)注4を提出。これは、2030年度に2013年度比で26%の温室効果ガスを削減(2005年度比で25.4%削減)の水準(約10億4,200万t-CO2)にするという内容であった。https://www.env.go.jp/press/101241.html
  2. 2016年5月に、(1)の内容をベースに「地球温暖化対策計画」を閣議決定し、「中期目標」として2030年度に2013年度比で26%の温室ガスを削減する、さらに「長期的目標」として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すことを位置付けた。https://www.env.go.jp/press/102512.html
  3. 2019年6月には、IPCCの『1.5C特別報告書』の発表を受けて、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定。地球温暖化対策の最終到達点として「脱炭素社会」注5)を掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指す、とした。これは抽象的であるが、2030年に26%減、2050年に80%減、その先の2050年以降(2051年から2100年まで)の、できるだけ早い時期に正味排出量を100%減(=脱炭素社会。森林等による吸収量との相殺分も含める)を実現することを掲げた。http://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/mat1.pdf

〔3〕世界中で脱炭素化への動きが活発化

 図3に示すように、世界の各国は、パリ協定に基づいて削減目標を自主的に決めて国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出している。さらに、パリ協定の実現に向けて、途中で世界全体の削減目標の進捗状況を確認して、5年ごとに見直しが行われる。このとき、先進国は発展途上国が自国の目標を実現するために資金提供等を含めて支援すること、なども合意されている。

図3 パリ協定 :2015年12月合意、2020年1月から始動:5年ごとに進捗状況を把握する仕組み

図3 パリ協定 :2015年12月合意、2020年1月から始動:5年ごとに進捗状況を把握する仕組み

出所 環境省地球環境局

 このように、パリ協定を実現するため、世界中で脱炭素化への動きが活発化している。具体的には、図4に示すように、脱炭素化に向けて、

  1. 太陽光発電や風力発電、バイオマス発電などの普及によってCO2の増加を抑えること
  2. CO2排出量の多い石炭・天然ガス・石油などの利用を減少させ、省エネや電化を推進する。さらに植林や森林整備をはじめ都市の緑化などを推進し、CO2の吸収量を増大させること

などが取り組まれている。

図4 脱炭素社会へ:CO2の排出量を減らし、吸収量を増大させる

図4 脱炭素社会へ:CO2の排出量を減らし、吸収量を増大させる

出所 環境省地球環境局


▼ 注1
COP25:The 25th Session of the Conference of the Parties、国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(特定の条約を結んだ国々の集まり)。国連気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)に基づく締約国会議のことであり、温室効果ガス排出削減等の国際的枠組みを協議する最高意思決定機関。

▼ 注2
IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change、1988年に設立された「気候変動に関する政府間パネル」という国連組織。

▼ 注3
http://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/post_41.html

▼ 注4
NDC:Nationally Determined Contribution、国が決定する貢献。パリ協定に基づいて、各国が自主的に決定する温室効果ガス(GHG)の削減目標(約束草案)。その目標を各国が国連の気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局へ提出する。

▼ 注5
脱炭素社会:今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源(森林などによる吸収含む)による、除去量との間の均衡(世界全体でのカーボンニュートラル)を達成すること。

関連記事
新刊情報
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...
5Gの技術からビジネスまですべてがわかる 5Gは社会や産業に何をもたらすのか? といったビジネス関連のトピックから、その変革はどのようなテクノロジーに支えられているのか?といった技術的な内容まで、わ...
本書は、特に産業用の5G/IoTの利用について焦点を当て、MWC19 Barcelona での産業用IoTに関する最新動向や、国内外の最新動向の取材をもとに、5Gの市場動向やビジネスモデルをまとめた解...