[特集]

みんな電力のP2P電力取引プラットフォーム「ENECTION2.0」が拓く新たな電力ビジネス

― ブロックチェーン技術によって日本初の「電源のトレーサビリティ」を実現 ―
2020/01/06
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

新たな電気の価値と卒FITの新サービス「顔の見えるPtoP 卒FITプラン」

表4 「顔の見えるPtoP 卒FITプラン」の買取価格一覧

表4 「顔の見えるPtoP 卒FITプラン」の買取価格一覧

※1:買取価格は消費税10%を含んだ金額 ※2:1年間限定
出所 https://minden.co.jp/personal/wp-content/uploads/2019/11/191013_sotsufit_release-1.pdf

 2019年11月1日から、家庭用太陽光の、FIT制度による買取期間の満了が順次開始されている。例えば、この卒FIT電源は2023年度までに165万件に達し、約670万kW(設備容量換算で原子力発電所6基分相当)が発生すると見込まれ、すでに多くの電力会社が買取サービスおよび価格を公表している。

 みんな電力でも、2019年11月1日から、同社のENECTION2.0を活用して、個人が自宅で発電した卒FIT電気を、好きな企業や団体に供給できるマッチングサービス「顔の見えるPtoP 卒FITプラン」を開始した(図8)。買取価格は大手電力会社と同額に設定され、また先着500件まではさらに「+5円」を1年間限定で上乗せして設定している(表4)。

図8 みんな電力・卒FIT応援プラットフォーム:卒FITでんきで出来るソーシャルアクション

図8 みんな電力・卒FIT応援プラットフォーム:卒FITでんきで出来るソーシャルアクション

出所 https://minden.co.jp/personal/wp-content/uploads/2019/08/press-release_20190827.pdfをもとに編集部で一部修正加筆

 卒FITでんきの供給先には、RE100加盟企業など再エネ利用に積極的な企業や、事業内容や商品が好みの企業を選ぶことが可能で、売電額に応じて企業や団体から返礼品を受け取ることもできる。具体的には次のような手順となる。

  1. 卒FITユーザーは、応援したい/好きな企業/団体を、みんな電力のプラットフォーム(ENECTION2.0)上で選択する。
  2. 当該ユーザーは余剰電力をみんな電力に売電し、みんな電力は、選択された企業や団体の需要に紐付けて、供給する。
  3. 卒FITでんきの供給量に応じて、現金支払いや当該企業・団体から返礼品が提供される。

 同プランへの参加企業や団体は、TBSテレビ、TBSラジオ、丸井グループ、三菱自動車工業、パタゴニア日本支社、公益財団法人横浜YMCA、社会福祉法人福祉楽団、大地を守る会、ステップアップ塾などがあり、今後、随時追加が予定されている。

新しい電気のあり方を象徴する新サービス

〔1〕顔の見えるPtoP 卒FITプラン

 みんな電力は、卒FIT電気を単なる電気としての価値に留めず、「電力生産者である個人が、自由にサスティナブル(持続可能)な企業や団体を選び、電力を供給できる時代をけん引するサービス」として「顔の見えるPtoP 卒FITプラン」を発表した。

 一方、同サービスは、RE100加盟企業や再エネ電気へのシフトを目指す企業や自治体にとっても、顧客の卒FITでんきを活用し、自社需要の再エネ比率を増やせるというメリットもある。同時に、顧客から卒FITでんきの供給を受けることで、電気を通じた顧客との接点が生まれ、自社商品やサービスの紹介など、自社のビジネスチャンスに繋げることも可能だ。

〔2〕多様化する新しい電気の価値

 「自由化と分散化によって電力ビジネスはその形態が大きく変化し、今後は多様化の時代を迎えます(図9)。現在の電力会社の電気料金は基本的には平均値で、仕入れがこれだけかかったからこれだけくださいと、電力会社が決めた価格を支払っていますが、○○が作った電気は、その人が決めた値段で払ってよいのです。例えば、自分が生産者だったら、好きな人(気に入った人)に電気代を無料で提供していい、というのもありだと思います。またはその逆で、有名人の作った電気だったらその倍の金額でいいよ(買うよ)、という変化があってもいってもいい」と、三宅氏は多様化する新しい電気の価値について語った。さらに、「これは新しい経済圏の創出につながる」と続けた。

図9 電力の自由化により変化するビジネスモデル

図9 電力の自由化により変化するビジネスモデル

出所 みんな電力株式会社、「太陽光発電FIT終了後の選択で未来が変わる」、2019年10月14日

*    *    *

 脱炭素社会を目指して再エネ電源を指向する世界的な潮流とともに、来たる2020年4月からスタートする送配電部門の法的分離や容量市場が新設されるなど、日本の電力市場が大きな変革を迎えている中で、小売電気事業者は、変化に対応できる新たな電力ビジネスを進めていかなければならない。

 みんな電力のP2P電力取引プラットフォーム「ENECTION2.0」を活用した「顔のみえる電力」の取り組みには、学ぶべきヒントがある。

◎取材協力

三宅 成也(みやけ せいや)氏

みんな電力株式会社 専務取締役 事業本部長

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