電力事業をめぐる大きな変化:何が変わったか
〔1〕電力小売全面自由化
日本の電力小売自由化注3は、2000年3月から始まったが、その後も段階的に自由化が進められた。さらに、「安定供給の確保」「電気料金の最大限の抑制」「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」を目的に、2013年4月2日、電力システム改革が閣議決定された。
これにより、新しい電力システム改革が進められ、2016年4月1日、電力小売全面自由化が実施された。この結果、新たに一般家庭やコンビニ、町工場などの低圧分野(100〜200Vで契約50kW未満)の電力市場に、小売電気事業者の新規参入が可能となった。これによって、一般家庭を含むすべての需要家が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。
それ以前は、例えば大手電力会社(旧10電力会社)の発電所で発電された電気を需要家に供給するもので、電力購入者は、どの場所のどのような種類の発電所(例えば火力発電所なのか太陽光発電所なのか)でつくられた電気を購入しているのかを、意識することはなかった。
〔2〕FIT制度で電源の集中から分散へ
写真2 「電力という“富”が、いろいろな人に分散されるようになった」と語る、三宅 成也 氏(みんな電力 専務取締役 事業本部長)
2012年7月1日からスタートしたFIT(Feed-in Tariff、再生可能エネルギーの固定価格買取制度)も、電力事業に大きな影響を及ぼした。この制度は、太陽光や風力、水力などの再エネで発電された電気を、一定期間、国が定める価格(FIT価格)で電気事業者が買い取ることを義務付けたものである注4。
これによって、個人や企業、自治体など誰でも発電所をもって電気をつくることができるようになった。これらの再エネのうち、住宅用の太陽光発電(10kW未満)については、FIT制度を背景に急速に普及してきた。これまでの大型火力発電などのような大規模集中型の発電システムから、分散型(生産者が分散)の発電システムに変化してきた。
みんな電力 専務取締役 事業本部長 三宅 成也 氏(写真2)は、「これは電力の“民主化”の始まりなのです。もともと独占されていた電力という“富”が、いろいろな人に分散されるようになったのです。分散電源で作られた電力は、電力会社に売って収益化できるとともに、電力の自由化によって、電力(会社)を選べるようになってきたのです」(図1)と述べた。
図1 自由化により「電力の作り手」と「売り手」が開放
IPP:Independent Power Producer、独立系発電事業者。別名として「卸供給事業者」とも呼ばれている。自前の発電施設でつくった電気を電力会社に販売する企業のこと〔例:J-POWER(電源開発株式会社)など〕。
出所 みんな電力株式会社、「太陽光発電FIT終了後の選択で未来が変わる」、2019年10月14日
さらに、「電力会社を価格で選ぶことはできるようになったのですが、当時はまだ、生産者と使う人(購入者)の間はつながっていなかったのです。それをつなぐことができたら面白いんじゃないの? と考えたのが“顔の見える電力”だったのです」と続けた。
▼ 注3
日本の電力自由化:最初の小売自由化は2000年3月からスタートした。初めは、大規模工場やデパート、オフィスビルが電力会社を自由に選ぶことができるようになったが、その後、2004年4月続いて2005年4月には、中小規模の工場や中小ビルへと徐々に拡大された。2016年4月1日からは、一般家庭や商店などでも電力会社が選べるようになり、電力小売完全自由化が実現された。
▼ 注4
住宅用の太陽光発電(10kW未満)については、2009年11月から10年間に設定(契約)されていたFIT制度期間が、2019年11月から順次終了(卒FIT)している。2019年の11月と12月だけでも卒FITは53万件となる。