日本の洋上風力発電は2040年に3,000万〜4,500万kWへ
このような世界的な流れの中で、日本では、ポテンシャルをもちながらも普及が遅れていた洋上風力発電について、風力発電協会が発表した中長期の導入目標では、
- 2030年:洋上風力10GW(1,000万kW)+陸上風力18〜26GW
- 2040年:洋上風力30〜45GW(3,000万kW〜4,500万kW)+陸上風力35GW
- 2050年:洋上風力90GW(9,000万kW)+陸上風力40GW=130GW
という目標が設定され、今後、急速な普及が見込まれている。
これによって、日本の2050年における推定需要電力量に対して、風力発電によって30%以上の電力が供給される計画となっている。
日本の洋上風力発電:続々広がる促進区域
〔1〕2,506万kWの洋上風力発電が環境アセスメントへ
日本の洋上風力発電については、2018年11月に制定され2019年4月に施行された再エネ海域利用法「再エネ海域利用法」(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)注8を背景に、表6に示すように、まず2019年12月に、長崎県五島市沖が初の海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域に指定された。
続いて2020年7月には、秋田県能代市の三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖(北側・南側の2区域)、千葉県銚子市沖の3カ所(4区域)が促進区域に指定された。
さらに、新たな有望区域として、2020年7月に秋田県八峰町・能代市沖を含む4カ所が公表され、国による風況・地質調査が進められている。また、一定の準備段階に進んでいる区域(有望区域を除く)に、秋田県潟上市・秋田市沖を含む6カ所が挙げられているほか、2020年10月末現在、約2,506万kWの洋上風力発電案件が環境アセスメント(環境評価)手続きが実施されており、環境問題や漁業問題などを解決しながら、どのように具体化されるのか、今後の展開が注目されている注9。
現在、日本の洋上風力発電は、図7に示す14カ所が、促進地域あるいは有望な区域などとして検討されている。
〔2〕洋上風力向けに電力系統のマスタープランを策定へ
最新版グリーン成長戦略における洋上風力発電については、電力系統(送電線等)や港湾などのインフラ整備が計画的に推進している。
さらに今後、予想される洋上風力発電の導入ラッシュに向けて、送電網などの系統整備のマスタープラン(電力系統の長期整備方針)が検討されており、2021年5月に取りまとめられた中間整理注10を踏まえて、2022年度中を目途にマスタープランの完成を目指している。
さらに、洋上風力発電の適地から大需要地に電力を運ぶ送電網については、海底の長距離直流送電線(HVDC)注11について、「長距離海底直流送電の整備案に向けた検討会」注12を2021年3月から立ち上げ、技術的課題やコストを含め、導入に向けた整備案を具体化する検討が続けられている。
今後の展開:第6次エネルギー基本計画とCOP26
ここまで、日本政府が「2030年度のCO2削減目標(NDC)を2013年度比で46%減とし、50%の高みに向けて挑戦する」という宣言以降の、国際的あるいは国内的な動きを整理して、最新版グリーン成長戦略のロードマップを紹介し、国際的にも再エネの主力電源化に向けた切り札といわれる洋上風力発電(計画)の動きを中心に見てきた。
国際的なカーボンニュートラルの波を受けて、日本政府は、2021年夏に発表予定の「第6次エネルギー基本計画」にどのように反映するのだろうか。あるいは、国際的に注目されているCOP26(2021年11月開催予定)に、日本はどのように貢献できるのか。
日本政府にとっても日本企業にとっても、目が離せない残り半年余りとなっている。
▼ 注8
https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190315001/20190315001.html
▼ 注9
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20210127_1.pdf
▼ 注10
広域機関(OCCTO):「マスタープラン 中間整理」(2021年5月31日)、マスタープランの中間整理(概要)
▼ 注11
HVDC:High Voltage Direct Current、高圧直流送電。高電圧の直流で行う送電システム。交流送電に比べて送電損失が小さく、長距離・大容量送電に適している。洋上風力発電など再エネの主力電源化を支援し、脱炭素社会を実現するためのソリューションとしても注目されている。
▼ 注12
長距離海底直流送電の整備に向けた検討会