スターバックス:ソーラーシェアリングを展開
〔1〕10月末には国内直営店350店舗で再エネへ切り替え
世界規模でコーヒーのチェーン店を展開するスターバックス注8は、すでに6年前の2015年にRE100に加盟し、脱炭素に向けて先進的な事業展開を推進している。
日本ではスターバックス コーヒー ジャパン(以下、スターバックス)として事業展開しているが、同社における使用電力の再エネへの切り替えは、2021年2月にオープンした、「狭山市入間川にこにこテラス店」を皮切りに始まった。導入の基本方針は、「地域の電力を選定し、100%再エネに切り替える」だ。
すでに2021年4月末までに、北海道、東北、沖縄を除く、直営店301店舗で切り替えが完了し、10月末には北海道、東北、沖縄を含む約350店舗へ拡大する。これによって、日本国内のスターバックスの約2割にあたる、直接電力契約が可能な直営店350店舗での再エネの切り替えが完了する。
スターバックスと共同する電気事業者は、みんな電力、中部電力ミライズ、北陸電力、関西電力、ローカルエナジー、中国電力、四国電力、九州電力などで、農業と再エネ発電を同時に実現する「ソーラーシェアリング」注9なども採用している。
今回の切り替えでは、「地域の再エネ電力を、地域の店舗で循環する」ことを基本とし、環境に配慮した発電方法を採用している。さらに地域の雇用創出や、地域課題の解決につながる活動をしている電気事業者の電力を取り入れる方針を表明している。これによってスターバックスでは、2030年までにCO2の50%削減目標の達成を目指す。
〔2〕スターバックスが使用するソーラーシェアリングの事例
写真1に、スターバックスが使用している、千葉県の匝瑳市(そうさし)にあるソーラーシェアリング「匝瑳飯塚Sola Share 1号機」(小売電気事業者はみんな電力)の外観を示す。
写真1 ソーラーシェアリングの例:匝瑳飯塚 sola share 1号機(みんな電力)
出所 https://portal.minden.co.jp/powerplant-info/a0c5F00000PaqpqQAB
この匝瑳飯塚Sola Share 1号機は、千葉大学の講師と学生たちが立ち上げた大学発ベンチャーが運営している「ソーラーシェアリング」である。農地の上に太陽光パネルを設置して発電を行う仕組みで、1つの土地で農業と再エネ発電を同時に実現している。これによって、農業従事者の所得向上や休耕地の削減にもつながっている。
匝瑳飯塚Sola Share 1号機からの再エネ電力を供給する対象店舗は、茨城県のスターバックス神栖(かみす)店、千葉県のベイシア富里店、香取佐原店、成田美郷台(なりた・みさとだい)店である。
前出の石田氏は、「このような地域の再エネ電力を、地域の店舗で循環させる視点から、再エネ電力を選択し導入する取り組みは、日本だけでなく世界の企業でも実施されています」と述べ、①環境負荷、②持続性、③地域制、④追加性の4つの再エネの選択基準を、表3で示した。
表3 再生可能エネルギーによる電力の4つの選択基準
出所 石田 雅也、「企業の自然エネルギー調達の課題」、自然エネルギー財団ウェビナー、2021年7月9日
▼ 注8
スターバックス:Starbucks Corporation。米国ワシントン州シアトルで1971年に開業。全世界で3万店以上の店舗を展開し、1995年に、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社(本社・東京都品川区)を設立。ジャパンの店舗数は1,637店舗、従業員数は4,397名(2021年3月現在)。
▼ 注9
ソーラーシェアリング:Solar Sharing。営農型太陽光発電。 田畑などの農地で、農業と太陽光発電事業を両立させる仕組み。農地を転用して太陽光発電設備を建設するのではなく、農地の状態のままで、農業を行える空間を確保した支柱の上に太陽光パネルを設置する新しい仕組み。同じ農地で、太陽光を「農業と太陽光発電とで共有できる」ことから、ソーラーシェアリングといわれる。農林水産省の2013年3月の通達で実現した。