日本の電源構成と調達方法
〔1〕再エネは全体の20%
ここで、日本の2019年度の電源構成を見てみよう(図1)。
図1 日本の電源構成(2019年度。発電電力量の比率、単位:%)
出所 石田 雅也、「企業の自然エネルギー調達の課題」、自然エネルギー財団ウェビナー、2021年7月9日
再エネ(図1の自然エネルギー)は全体の約20%を占め、その内の半分弱が水力発電となっている。日本の水力発電の稼働地点数は多いが、大規模なダムによる大規模な水力発電が主体となっている。しかし水力発電は、建設時と運転時の両面で環境負荷が大きく、さらに運転開始から長期経過したものが多いため、前述した「追加性」も認められない。
水力発電以外の残りの半分強は、太陽光、風力、バイオなどの再エネ電力となっているが、ほとんどが再エネ賦課金で賄われるFIT(固定価格買取制度)適用電源となっている注10。
〔2〕急拡大する「コーポレートPPA」
表4は、冒頭で述べた再エネ電力の具体的な調達方法を整理したものである。
表4 再エネ電力の調達方法と特性の違い
出所 石田 雅也「企業の自然エネルギー調達の課題」、自然エネルギー財団ウェビナー、2021年7月9日
繰り返しになるが、次のような4つの調達方法に分類できる。
- 小売電気事業者から購入
- 証書(環境価値)を購入
- 自家発電して自家消費
- 発電事業に投資あるいは長期契約(コーポレートPPA)
このうち、特に「追加性」に関しては、(3)と(4)の方法が効果的である。
「海外では、この数年間に、企業が発電事業者から直接再エネを長期契約で購入するコーポレートPPAのケースが急速に拡大しています。米国や欧州、さらに最近ではアジア太平洋地域でも拡大しています」と石田氏はコーポレートPPAの最新事情を述べた。
コーポレートPPAの各種契約モデルを、表5に示す。
表5 コーポレートPPAの各種契約モデル
出所 各種資料をもとに編集部で作成
セブン&アイ:オフサイト型コーポレートPPA
日本でも、いよいよコーポレートPPA(表5)の導入が始まっている。
図2は、流通業であるセブン&アイグループ注11のセブン-イレブン店舗やイトーヨーカ堂店舗が、NTTグループの再エネ発電事業者であるNTTアノードエナジーが新設した、「追加性」のある太陽光発電の電力を長期契約(20年間)して供給する「オフサイト型のコーポレートPPA」の例である。
図2 セブン&アイが長期契約する太陽光発電(オフサイト型コーポレートPPA)
出典:セブン&アイ・ホーディングス他
※グリーン電力:太陽光や風力、バイオマス等の再エネによって発電されたCO2排出量ゼロの電力のこと(アリオ亀有はオフサイトPPA完成前から他のグリーン電力を使用している)
出所 石田 雅也、「企業の自然エネルギー調達の課題」、自然エネルギー財団ウェビナー、2021年7月9日
セブン&アイは、RE100(CO2排出量ゼロ)を目指して、
- セブン-イレブン40店舗は、NTTアノードエナジーの千葉若葉太陽戸発電所(0.8MW。2021年6月に完成)から、
- イトーヨーカ堂のアリオ亀有店は、NTTアノードエナジーの香取岩部太陽光発電所(2.3MW。2022年1月完成予定)から、
それぞれ再エネ電力を購入する。
▼ 注10
住宅用太陽光発電(低圧、10kW未満)の余剰電力は、固定価格の買取期間が10年間と定められている。このため、2009年11月にスタートした余剰電力買取制度の適用を受けた一般需要家などでは、2019年11月以降、10年間の買取期間を順次満了している。満了した余剰電力は卒FIT電源と呼ばれる。卒FIT電源の容量(kW)は、例えば2019年11月・12月分が53万件(200万kW)、2020年は20万件(82万kW)、2021年は27万件(114万kW)である。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/008_03_00.pdf
▼ 注11
株式会社セブン&アイ・ホールディングス:本社は東京都千代田区。2005年9月1日設立。コンビニ、総合スーパー、食品スーパー、百貨店などの各事業を中心とした企業グループの運営会社。
連結従業員数:13.5万人、グループ売上:11兆448億円(2021年2月現在)