[特別レポート]

効率的な再エネ発電をどう実現するか!

― 気象協会が気象予測データを提供しインバランス料金も削減 ―
2021/10/04
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

需要計画値見直しの事例

〔1〕1日3回の要計画の見直し

 図11に、大手小売電気事業者B社の最近の事例を示す。このケースでは、気象協会からは1日に朝・昼・夕方の3回、需要予測データが配信される。

図11 【事例】大手小売電気事業者B社の時間前市場の活用スケジュール

図11 【事例】大手小売電気事業者B社の時間前市場の活用スケジュール

出所 一般財団法人 日本気象協会「気象×エネルギーTotal Support」、インテル・エネルギー・フォーラム2021(第1回 追加セッション、2021年9月2日)より

 すなわち、①前日朝の発表予測(スポット締切直前のもので一度、需要計画を立てる)に続いて、②当日の朝、③当日の昼、④当日の夕方という断面で、それぞれ気象協会から送信される最新のデータで、朝以降、昼以降、夕方以降という時点の需要計画を1日3回見直している。

〔2〕需要計画見直しで「最大50%」誤差を改善

 図12は、このような需要計画の見直しによって、「最大50%」もの誤差を改善した前出の「大手小売電気事業者B社」の事例である。

図12 【事例】:計画見直しによる誤差の改善幅(最大50%軽減)

図12 【事例】:計画見直しによる誤差の改善幅(最大50%軽減)

出所 一般財団法人 日本気象協会「気象×エネルギーTotal Support」、インテル・エネルギー・フォーラム2021(第1回 追加セッション、2021年9月2日)より

 図12は、横軸には時間(30分単位)、縦軸には気象協会が「前日朝時点で発表したデータの需要予測誤差に対する、当日発表したデータの予測誤差の割合(%)」を示しており、各30分コマ(最大誤差100%)に対して、図の青色の部分は、「当日見直したらどの程度誤差が小さくなるか」を示している。

 図12は、気象協会が当日発表した最新の予測データの活用によって、市場価格が高騰しやすいために見直す「昼」(11:30)以降を示しているが、図12中で大きな矢印で示す16:30時点で50%ほどの誤差が軽減できている。すなわち、前日朝の需要計画値で生じていたはずの需要予測誤差を最大50%も軽減(半減)しており、エネルギーコストが大幅に改善されていることがわかる。

 しかし、見直しによって需要予測誤差が半分に軽減したからといっても、時間前市場で電力を調達したりするなどの運用作業が新たに発生するため、費用対効果については、今後、検証が必要だ。

 とはいえ単純に見れば、特に市場が高騰しやすい夕方の時間帯(16:30)で50%ものインバランス量を削減できる可能性があることは、非常に効果的な事例だ。

今後の展開:DXの推進

 以上、気象協会の再エネの主力電源化への気象予測データの最新動向を見てきたが、電力システム改革以降、電力エネルギー分野では、2021年4月から需給調整市場、2021年9月から再エネ価値取引市場注13、さらに2022年4月からFIP制度の開始が予定されているなど、新しい市場や制度が次々に登場している。

 このため気象協会では、単なる気象情報の提供会社としてではなく、カーボンニュートラル時代に向けてDXを推進し、時代の流れに沿った形で新しい需要予測サービスをいち早く提供していくことが、至上命題になっている。


▼ 注13
https://www.jimga.or.jp/files/news/jimga/210714_saiene-market.pdf

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