[特集:特別対談]

加速する洋上風力発電の導入と次世代送配電ネットワーク≪後編≫

― 2050年カーボンニュートラルと再エネ主力電源化時代へのロードマップ ―
2022/01/09
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

モノづくり日本の、新たな産業へ

〔1〕日本メーカーには優れたポテンシャルがある

 今後、日本に洋上風力発電を増やしていくためには、洋上風力発電そのものを日本で産業化する必要があると思いますが、その点で、日本の機器ベンダーのポテンシャルをどのように捉えていらっしゃいますか。

加藤 風車の中に入る各種装置に関して、日本の機器メーカーのポテンシャルは相当高いものがあります。以前、日立製作所や三菱重工が風車を設計・製造していましたが、その装置や部品は、ほとんど国内メーカーのもので組み立てていましたから。

 風車の心臓部であるナセル部に使用される、ベアリング(軸受け。機械の中の軸をなめらかに回転させる部品)をはじめ、発電機などの電気関連製品、変圧器、モーター、羽根(ブレード)の角度を調整する際の油圧モーターや電動モーターなどは、日本が得意とするところであり、世界でも通用すると思っています。

 私がMHIヴェスタス(デンマーク)に所属していたとき、遮断機は、日本メーカーの国内工場で製造したものを購入していました。発電機はフィンランドのメーカーでしたが、その会社は日本メーカーの100%子会社でした。ブレードの炭素繊維は、大手日本メーカーの子会社から購入していました。

〔2〕広がる洋上風力発電市場も好材料

 洋上風力発電になると、最近は出力が14〜15MW級と高出力で、回転羽根(ブレード)も直径200mを超えるなど、風車のサイズも非常に大きくなってきました。そのため、例えば洋上風力のブレードの重さは数十トンに、さらにナセルやタワーの重さは、それぞれ約500トン程度もの重さとなり、その輸送作業も大変ですね。

加藤 洋上風力発電システムの設備全体(図6、図7)は、陸上システムに比べて5〜6倍程度大きくなりますから、日本企業が参入するとなると、新たに工場などの設備投資が必要になります。それを促進するための補助金制度、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業補助金」のようなものの継続を、現在、政府と話し合いを行っています。

図6 洋上風力発電システム(固定式)の構成と各構成要素の概要

図6 洋上風力発電システム(固定式)の構成と各構成要素の概要

[出典]「風力発電導入ガイドブック 2008」(2008、NEDO)をもとに、一部加筆修正して編集部で作成、
出所 NEDO「再生可能エネルギー技術白書:第2版」、2014年2月

図7 洋上風力発電ウィンドファームの主要な構成要素

図7 洋上風力発電ウィンドファームの主要な構成要素

出所 NEDO「再生可能エネルー技術白書(第2版)」、2014年2月

 ところで、日本における風車製造の産業化にあたって、どのようなストーリーをお考えですか。

加藤 まず風車メーカーに、図6に示すナセルなどの組み立て工場を作ってもらうことです。当初は、風車関係に必要な部品を海外から輸入し、日本の工場で組み立てを行うコンプリート・ノックダウン生産の方式(Complete Knock Down、完全な現地組み立て生産方式)でもしかたないと思っています。

 今、GEが東芝と風車の工場を建設しています注2が、そこで組み立てが始まれば日本の部品メーカーにもチャンスが広がります。そういった形で徐々に産業として裾野を広げていくのがいいのではないかと考え、現在、政府と話をしています。

 洋上風力発電の市場規模は、2040年に最大45GWと大きくなりますからね。

加藤 そうです。今後毎年、日本で風車をたくさん製造する必要があります。そうなると、その巨大な風力発電システムのすべてを欧州から輸入するのは、輸送面からも経済的に不合理ですし、そこまで市場規模が大きくなったら、日本メーカーの製品で代替えしていくことになるはずです。代替えには、実証実験などで時間はかかると思いますが、日本メーカーのポテンシャルは高いですし、日本版=低風速型の効率の良い風車の開発につながる、と期待しています。


▼ 注2
GEリニューアブルエナジー/東芝エネルギーシステムズ、「GEと東芝が洋上風力発電システム分野において戦略的提携契約を締結」、2021年5月11日

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