[クローズアップ]

WBCSDが改訂版『Vision 2050』(大改革の時)を発表

― 企業が取り組むべき「変革の道筋」9分野を特定 ―
2022/02/05
(土)
新井 宏征 株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

世界200社のCEOの連合体である「WBCSD」(持続可能な開発のための世界経済人会議)は、2021年3月に、最初の『Vision 2050』を改訂した『Vision 2050: Time to Transform』という報告書(図1)を発表した。同年10月には日本語版である『ビジョン2050:大変革の時』も発表した。
この報告書では、「2050年までに90億人以上がプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)の範囲内で真に豊かに生きられる」世界の実現に向けて、企業がどのように対応すればよいのかが詳細に示されている。
本稿では、『Vision 2050』を発表したWBCSDについて紹介したうえで、報告書のもっとも重要な「Part2 変革の道筋」を中心に紹介する。

WBCSD(持続可能な開発のための経済人会議)とは

図1 『Vision 2050: Time to Transform』(ビジョン2050:大変革の時)の表紙

図1 『Vision 2050: Time to Transform』(ビジョン2050:大変革の時)の表紙

WBCSD、2021年3月25日発行(日本語版:2021年10月26日発行、全116ページ)
出所 日本語版
英語版

 WBCSD(World Business Council for Sustainable Development、持続可能な開発のための世界経済人会議。ダブリュウビーシーエスディー)は、1995年に設立(本部:スイス・ジュネーブ)された団体で、私たちが直面している持続可能性に関する課題に対して、ビジネス分野の関係者による意見交換や意見表明の場として設立された。

 同団体は、UNCED〔United Nations Conference on Environment and Development(環境と開発に関する国際連合会議)、通称「地球サミット」(Earth Summit)〕の事務局長を務めたモーリス・ストロング(Maurice Strong)氏が、「世界における持続可能性や環境に関する問題について、経済分野のメンバーも積極的に関与するべきだ」という考えを世界中のビジネスリーダーに呼びかけたことに端を発する。

 この呼びかけがきっかけとなり、1991年に世界48のCEO(Chief Executive Officer)が集まり、BCSD(Business Council for Sustainable Development、持続可能な開発のための経済人会議)が設立され、活動を行っていた。その後、1995年に、同じ目的で活動しているWICE(World Industry Council for the Environment、環境のための世界産業会議)と合併し、現在まで活動を行っている注1

WBCSDの中における日本

 WBCSDは現在、200社ほどの企業がメンバーとなっている。それらの企業の大半は欧州の企業であり、日本企業は全メンバーの10%を占めている(図2)。

図2 世界におけるWBCSDのメンバー分布

図2 世界におけるWBCSDのメンバー分布

出所 https://www.wbcsd.org/Overview/Our-members

 なお、現在のWBCSDリーダーシップチームには、エグゼクティブ・コミッティ(執行委員会)として、富士通 代表取締役社長の時田 隆仁(ときた たかひと)氏注2とトヨタ自動車 取締役副会長の早川茂(はやかわ しげる)氏注3が名を連ねている。


▼ 注1
同団体の歴史についてはOur Historyに詳しく紹介されている。

▼ 注2
https://www.wbcsd.org/Overview/About-us/Our-team/ExCo/Takahito-Tokita

▼ 注3
https://www.wbcsd.org/Overview/About-us/Our-team/ExCo/Shigeru-Hayakawa

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