[特集]

次世代スマートメーターシステムの最新動向

― 電力DX/GXを加速! 標準仕様や新設IoTルートで新ビジネスが展開へ ―
2022/02/05
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

次世代スマートメーターにおける通信技術

 次に、次世代スマートメーターシステム(低圧)に関する、具体的な通信技術を見てみよう。

〔1〕一般住宅側における通信:Bルート

 前出の図3左側に示す、一般住宅側のBルートの新しい通信方式と、新設されたIoTルートにおける通信を見てみよう。

(1)Bルート:「Wi-SUN920」を主方式、「Wi-Fi2.4GHz」を従方式へ

 スマートメーターと家庭内のHEMSを結ぶ通信路であるBルートは、これまで、①920MHz帯を使用するWi-SUN方式(Wi-SUN920)を主方式とし、②PLC(電力線通信。正式規格名は3G-PLC)方式を従方式としてきたが、今回、PLC方式の利用率が極めて低いところから再検討が行われた。

 その結果、次世代スマートメーターシステムでは、①従来の「Wi-SUN920」を主方式とし、国際的にも広く普及しコスト的にも適切であるところから、2.4GHz帯を使用する②Wi-Fi方式(Wi-Fi2.4GHz)が従方式として採用されることになった。

 同時に、図5に示すスマートメーター(スマメ)の通信部については、通信方式を交換できる構成とし、柔軟かつ経済的な仕様となった注7

図5 スマートメーター(スマメ)の通信部を交換可能な仕様に

図5 スマートメーター(スマメ)の通信部を交換可能な仕様に

出所 野村総合研究所「次世代スマートメーターの標準機能について」、2021年12月17日

(2)新設されたIoTルート

 前出の図3左側に示すIoTルートが、ガス・水道メーターの計量データ、あるいはEV充電器や太陽光発電のパワーコンディショナー(PCS)などの計量データの収集をはじめ、ガス供給の遠隔開閉も可能とすることを目的として新たに規定された。

 このIoTルートには、現在、10年ごとに検定が必要なスマートメーターとは別に、計量法の改正によって2022年4月から「特定計量制度」注8がスタートするため、検定が不要な「特例計量器」が、事前届出で使用できるようになる。このため、図6に示す、従来のHEMSを使ってデータを伝送していた太陽光発電のPCSやEV用充電器、あるいは家電機器などに、簡易な「コンセント型の特例計量器」などをスマートメーターと連携させて、各種の電気取引を行うことも検討されている。

 西村氏は、「今後、VPP(Virtual Power Plant)などの普及に伴って、アグリゲーター注9のビジネスが活発化してきますので、このような特例計量器の動きに注目しておく必要があります」と述べ、IoTルートが今後のビジネスモデルを変革していく可能性を示した。

図6 「特定計量器」と「特例計量器」の位置づけと推定誤差

図6 「特定計量器」と「特例計量器」の位置づけと推定誤差

出所 資源エネルギー庁「特定計量制度及び差分計量に係る検討について」、2020年9月4日


▼ 注7
現行のスマートメーターの通信部と計量部は、セキュリティに関する暗号キーをペアリングで行っている(2つをセットにして組み合わせている)ため、多くのメーターは単独で通信部を交換できない※。しかし、暗号鍵を再ペアリング可能な設計とすることで、通信部のみの交換が可能な仕様にできる(※ この場合、通信部と計量部をセットで交換する場合にしか対応できない)。

▼ 注8
特定計量制度:計量法に基づく検定を受けない「特例計量器」の使用を、事前届出で可能とする制度。現在のスマートメーターは計量法に基づく検定を受ける必要がある(検定期間10年)。

▼ 注9
アグリゲーター:一般送配電事業者と需要家の間に位置し、VPP(バーチャルパワープラント)やDR(デマンドレスポンス)の仕組みを利用して、需要家側の再エネや蓄電池、自家発電等の比較的規模の小規模な分散電源をIoTで束ね、その供給力を容量市場、需給調整市場などを通じて一般送配電事業者に提供する、あるいは自ら市場取引をする事業者。改正電気事業法(2020年6月成立、2022年4月施行)において初めて、特定卸供給事業(アグリゲーター事業)が位置づけられた。「特定卸供給事業制度」(アグリゲーターのライセンス制度)は2022年4月から開始される(後出の表3を参照)。
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/system_kouchiku/009/009_04.pdf

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...