IoTルートにおける共同検針システムの登場
このようなIoTルートの新設によって、現在、一般家庭のライフラインとして使用されている電気やガス、水道のメーターの計測を一本化する検討も行われている。
すなわち、図7の上部に示すように各事業者が個別にシステムを構築するのではなく、図7下部に示すように、各事業者の検針システムの統一を検討する(共同システムとする)ことである。これによって、各事業者が単独で検針システムを構築する場合と比較して、メーターまでの通信網や通信監視システム(HES)を統一化でき、コストの低減ができるようになる。
図7 個別検針システムの構築からコスト低減の共同検針システムへ
U-Bus Air:Uバスエア。NPO法人 テレメータリング推進協議会(JUTA:Japan Utility Telemetering Association)によって策定された各ガスメーターを、920MHz帯で使用するメッシュ(多段中継無線)方式の仕様。伝送速度100kbpsで超低消費電力仕様となっている
出所 資源エネルギー庁「次世代スマートメーターと差分計量等の検討について」、2021年5月25日
図3のスマートメーターとコンセントレータ間の通信は、従来通りFAN(地域通信網。無線マルチホップあるいはLTE/5G)で行い、コンセントレータとHES間の通信はWAN(LTE/5Gなど)で行われる。
事例:計量法に基づく「特定計量器」と検定を受けない「特例計量器」
次に、計量法の検定を受けない「特例計量器」の使用事例を紹介しよう。
〔1〕PPAモデルと新たな電気計量制度の適用
図8は、太陽光発電システムを、PPAモデル〔第3者(Y社)所有の電力販売契約モデル〕注10によって家庭の屋上に設置した例である。図8に示すように、太陽光発電(Y社所有)で発電した電気(系統の電気よりも安い20円/kWhとする)は、パワーコンディショナー(PCS)、家庭の分電盤を経由して、エアコンなどの各家電機器で消費される。
図8 従来の電気計量制度の適用と新たな電気計量制度の適用
PCSに設置された「特例計量器」では電気の自家消費量を測定し、総発電量から自家消費量を差し引いた電気を、自分(家庭)が希望する小売電気事業者に売電する(取引可能にする)可能性などが期待できる。図8右下には、外部の電力系統(小売電気事業者X社)からの電気(25円/kWh)を、スマートメーター経由で買電している状況が示されている。
このとき、「スマートメーターの計量値」と「特例計量器の計量値」の差引によって顧客とPPA事業者が取引をする可能性があるが、これについては時間区分のズレ等の問題から難度が高く、それぞれ顧客との取引となる可能性が高い。
▼ 注10
PPAモデル:Power Purchase Agreement(電力販売契約)モデル。一般家庭等の屋根に、第三者(PPA事業者)が太陽光発電システムなどを無償で設置し、そこで発電した電気を家庭(需要家)自身が購入し、PPA事業者にその電気の使用料を支払うビジネスモデル。PPAモデルには初期導入コストやメンテナンス費用などがなく、電気料金が安くできるなどのメリットがある。