次世代スマートメーターのシステム構成と特徴
次世代スマートメーターのシステムは、どのように構成されるのだろうか?
ここでは、前出の表1に示す2020年9月にスタートした、スマートメーターに関連する次の2つの委員会での低圧部門に関する主な審議内容を中心に見ていく。
- 特定計量制度及び差分計量に係る検討委員会(2020年9月4日設置)
- 次世代スマートメーター制度検討会(2020年9月8日設置)
①スマートメーター仕様検討WG(ワーキンググループ、2020年9月29日設置)
②次世代スマートメーターセキュリティ検討WG(2021年5月7日設置)
〔1〕Aルート、Bルートに加えて新設されたIoTルート
図3に、次世代スマートメーターシステム(低圧)の構成と標準機能(決定事項)を示す。次世代スマートメーターシステムは大きく、次のような領域に分けられている。
- 一般住宅(家庭):図3左側のスマートメーターまで[領域①]
- 一般送配電事業者:図3右側のコンセントレータ(集線装置)〜託送業務システム間等[領域②、領域③]
一般住宅の領域では、①従来と同様にスマートメーターとHEMSなどとの通信を行うBルートに加えて、②新たにスマートメーターとガス・水道メーターや電気自動車(EV)などとの通信を行い、それらのデータを取集するIoTルートが新設された(詳細は後述)。
また、一般送配電事業者の領域では、Aルートとして、[領域①]コンセントレータからHES(通信制御システム、後出の表3の用語解説を参照)、[領域③]MDMS(スマートメーターデータ運用管理システム、後出の表3の用語解説参照)や託送業務システムまでを包含している。
〔2〕Cルートはグリッドデータバンク・ラボ(GDBL)で実証実験中
以前から検討されていた「Cルート」は、Aルートのデータ、すなわち図3中央右に示す一般送配電事業者のMDMSのデータを、インターネット(例:LTEや5Gを利用)を介して、第三者(小売電気事業者など)に開示するルートである。そのため、サイバーセキュリティなども含めた、より慎重な検討が求められている。
そこでCルートに関しては、現在、電力データを活用したイノベーションの推進に向けて、東京電力パワーグリッド、中部電力、関西電力送配電、NTTデータの4社(組合員)で設立したGDBL(Grid Data Bank Lab、グリッドデータバンク・ラボ。表2)で、サイバーセキュリティなども含めた電力データの有効利用について、多角的な実証試験が行われている。
表2 グリッドデータバンク・ラボ(GDBL)のプロフィール
出所 https://www.gdb-lab.jp/#anc01をもとに編集部で作成
〔3〕レジリエンス機能も検討へ
以上のほか、次世代スマートメーターに期待されるレジリエンス機能として、停電の発生を検知できる機能や、供給力不足時に全停電を避ける「遠隔アンペア制御機能」などの新しいレジリエンス機能も検討されている。
遠隔アンペア制御機能とは、一般送配電事業者が、異常時に遠隔から家庭のスマートメーターの電流上限値(例:60アンペア契約)を緊急に変更し、例えば最低でもスマートフォンが充電できる程度(例:1アンペア程度)に契約アンペア数を下げて、家庭に電気を送り続けるサービスのことだ。
このようなレジリエンス機能が検討されている背景には、2019年9月9日早朝に関東を直撃した、台風15号(東京湾から千葉県内を縦断)などの教訓がある。
図4に示すように、現状の電力システムではネットワークの構成上、高圧の配電線(6,000V)より下の低圧線(100〜200V)などの異常で起こる停電は把握できない。このため、復旧の見通しが立てにくく、一般家庭への復旧情報の公表を遅らせる要因の1つともなり、住民から批判された。
図4 低圧線の停電が認識できない
出所 資源エネルギー庁『「台風」と「電力」〜長期停電から考える電力のレジリエンス』(2020年1月13日)を一部修正して作成
このような経緯もあり、即座に停電を把握し復旧を効率的に行えるように、新しいレジリエンス機能が検討されている。