超臨界地熱発電:1基15万kWを開発へ
〔1〕日本の地熱発電産業の海外展開を拡大へ
ここまで、現在の地熱発電と革新的な次世代の地熱発電技術(EGS)の概要を見てきたが、2021年10月22日に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」では、「2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、超臨界地熱発電などの次世代型の地熱発電技術を世界に先駆けて実現し、地熱発電システム全体をパッケージで海外に売り込み、日本の地熱発電産業のさらなる海外展開の拡大に取り組んでいく」と明記している。
NEDOではこれまで、このような2050年を見据えて、2040年頃の実用化を目指し、平成29(2017)年度から超臨界発電の実現可能性(フィージビリティスタディ)の調査を実施注13し、平成30(2018)年度からは、一部、試掘(ためしぼり)への詳細についての事前検討を実施注14してきた。
〔2〕2050年を見据えた長期的な超臨界地熱発電の取り組み
図6に、従来型地熱発電と2050年を見据えた長期的な取り組みを行う超臨界地熱発電を比較して示す。
図6 2050年を見据えた長期的な取り組み:超臨界地熱発電の開発
出所 資源エネルギー庁、「地熱発電の導入促進に向けた経済産業省の取組について」、令和4(2022)年1月
図6に示すように、超臨界地熱発電1基の発電出力は15万kW(150MW)にも達し、超臨界の熱水の温度は400~500℃、地下の深さはマグマ付近に至る4~5km、地熱流体は高い腐食性を伴う海水起源となっている。
この超臨界地熱発電の出力「150MW」は、現在の最新の世界最大規模である、「1基:15MW(1万5,000kW)」級の洋上風力の10倍であり、かつ設備利用率も83%と、洋上風力の33.2%より2倍以上も高い性能を備えている。
さらに、このような超臨界地熱発電を実現するために開発された技術の一部は、従来の地熱発電への展開も可能であり、これによって、現状では高いといわれている地熱発電の発電コストを大幅に低減できることも期待されている。
▼ 注13
NEDOニュースリリース、「超臨界地熱発電の実現可能性調査に着手 —2050年頃の普及を目指す—」、2017年7月4日
▼ 注14
NEDOニュースリリース、「超臨界地熱発電の調査井掘削に向けた事前調査に着手 —複数地域での資源量評価や調査井の仕様検討などを実施—」、2018年9月13日