[特別レポート]

日本の地熱発電の現状と「次世代型地熱発電」への挑戦

― 1基15万kWの超臨界地熱発電を開発へ ―
2022/09/09
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

日本と世界の地熱発電の導入状況

〔1〕日本の地熱発電の導入状況

 図2は、日本の地熱発電の導入状況(全国的な分布状況)を示したものである。

図2 日本の地熱発電所の導入状況

図2 日本の地熱発電所の導入状況

出所 日本地熱協会、「地熱発電の現況と課題」、2021年1月14日

 図2に示すように、2019年3月末時点で66地点・87ユニット、合計設備容量は約

50万kW(49万3,933kW≒500MW)である(その後、増加し2021年3月末時点で61万kWとなっている。後出の表3参照)。

 稼働している地熱発電としては、例えば、フラッシュ発電方式(図中に表記なし)として九州の八丁原(はっちょうばる)発電所(写真1)や北海道の森発電所などがある。特に同発電所は、世界初のダブルフラッシュ方式(図1の脚注参照)による地熱発電所として有名である。

写真1 九州電力の八丁原(はっちょうばる)発電所の1・2号機の外観(各5万5,000kW、ダブルフラッシュ方式)

写真1 九州電力の八丁原(はっちょうばる)発電所の1・2号機の外観(各5万5,000kW、ダブルフラッシュ方式)

出所 独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源気候(JOGMEC)、「八丁原発電所

 また、バイナリー発電方式としては、北海道の洞爺湖温泉や九州の湯布院フォレストエナジーなどがある。

〔2〕世界の地熱発電所の導入状況

 図3は、世界各国の主な地熱発電の設備容量(MW)を比較したものである。

図3 世界各国の主な地熱発電設備容量(MW)の変化(日本は第10位)

図3 世界各国の主な地熱発電設備容量(MW)の変化(日本は第10位)

WGC:World Geothermal Congress、世界地熱会議
出所 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)「世界の地熱発電

 図3の2020年(赤い棒グラフ)に着目してみると、第1位が米国の3,700MW、第2位がインドネシアの2,289MW、第3位がフィリピンの1,918MWであり、日本は第10位で550MWとなっている。

 しかし、表3に示すように、主要国における地熱発電が可能な2021年時点の地熱資源量(ポテンシャル)を見ると、日本は、第1位の米国〔3000万kW(3万MW)〕、第2位のインドネシア〔2,799万kW(2万7,990MW)〕続いて、世界第3位〔2,347万kW(2万3,470MW)〕の豊富な地熱資源量をもっていることが見てとれる。

表3 主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量(2021年末時点)

表3 主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量(2021年末時点)

※地熱資源量はJICA作成資料(平成22年)および産業総合技術研究所作成資料(平成20年)等より抜粋して作成。
※地熱発電設備容量は、BP「Statistical Review of World Energy 2018」等より抜粋して作成。
出所 資源エネルギー庁「もっと知りたい!エネルギー基本計画④

 しかし、実際に日本で導入されている地熱発電設備の容量は、現在約61万kW(610MW)程度にとどまっており、世界的に見ても地熱資源量を活用する割合が少ないのが現状だ注9

 前述したように、地熱発電は、CO2排出量がほぼゼロで、天候などの自然条件に左右されず、加えて昼夜を問わず安定的に発電(利用率83%)できる「ベースロード電源」である。さらに、発電に使用した熱水をハウス栽培などに利用可能であり、地域経済へのメリットも見込める。


▼ 注9
[参照文献]資源エネルギー庁、もっと知りたい!エネルギー基本計画④、再生可能エネルギー(4)、「豊富な資源をもとに開発が加速する地熱発電

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