次世代地熱発電システム「EGS」
〔1〕グリーン成長戦略14重要分野のトップに
前述したが、NEDOは、次世代型の地熱発電技術「超臨界地熱発電」の実現に向けて調査を開始した。
それでは、超臨界地熱発電とはどのような発電システムなのだろうか。
令和3(2021)年6月に発表された、2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では、政府は、今後の成長が期待される14の重要分野についての実行計画を策定注10したが、その第1位に再エネの「洋上風力・太陽光・地熱」が位置づけられた(図4)。
図4 グリーン成長戦略で選定された成長が期待される14分野(2021年6月18日)
出所 経済産業省、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」、
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/pdf/green_koho_r2.pdf
このグリーン成長戦略では、「日本における従来の地熱発電における最大の発電容量は、1地点当たり数千~数万kWと低い出力であるが、次世代の超臨界地熱発電は約10万kW程度の発電施設の大規模化や発電コストの低減が期待され、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて重要な地熱発電技術である」と位置づけた。
〔2〕従来型の地熱発電とEGSを比較する
図5に、従来型の地熱発電と超臨界地熱発電を含む革新的な次世代地熱発電技術である「EGS」(地熱増産システム)の概要を示す。
図5 革新的な次世代地熱発電技術「EGS」の諸類型の現状と課題
EGS:Enhanced Geothermal Systems、地熱増産システム
JOGMEC:ジョグメック。Japan Oil, Gas and Metals National Corporation、独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
出所 資源エネルギー庁、「地熱発電の導入促進に向けた経済産業省の取組について」、令和4(2022)年1月
EGS(Enhanced Geothermal System)とは、水を人工的に地下に注入し、循環させることによって、地熱流体の生産を維持して増産するシステムのことである注11。
- 従来型地熱発電:地下の天然地熱貯留層に十分な水分が貯留されている場合に、地下から熱水や蒸気を取り出して発電を行う方式。
- 人工涵養(じんこうかんよう):地熱発電所の運転開始後に、十分な蒸気量が維持できるよう、天然の地熱貯留層注12に人工的に水を注入して発電する方式。
- 高温岩体(こうおんがんたい)地熱発電:地下に高温の岩盤(高温岩体)だけがあり、水分がない場合は発電できない。そこで、地上から高圧の水分を送り込んで岩盤を破砕し、人工的に地熱貯留層を創り出して発電する方式。
- 超臨界地熱発電:地下深く(4~6㎞)にあるマグマ付近の高温・高圧な超臨界熱水を利用する地熱発電する方式。超臨界熱水とは、純水の場合、温度374℃かつ圧力が22Mpa(218気圧)以上で超臨界状態となる熱水のこと。
▼ 注10
経済産業省、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」
▼ 注11
[参考文献]大成建設株式会社/地熱技術開発株式会社、「カーボンリサイクルCO2地熱発電技術」の開発に着手、2021年8月23日
▼ 注12
地熱貯留層:マグマによって熱せられた高温・高圧の地下水が溜まっている層。
(引用文献:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の「地熱資源情報」のサイトより)