ユーザー体験を向上させる、5Gミッドバンド
鹿島氏は、Time-to-Contentの事例として、北米ネットワークでの調査結果を挙げた。図11は、4Gと5G、さらに5Gは600~900MHzのローバンドと6GHz以下のミッドバンド(前述)で、クリック時のダウンリンクスループット(下りの実効速度)を比較したものだ。今回のエリクソンモビリティレポートでは、5Gミッドバンドの活用が注目された。
それによれば、5Gは4Gに比べて短時間にコンテンツを画面に表示、つまりユーザー体験を向上している。図11に見られるように、とりわけ5Gミッドバンドは、前述したTime-to-Contentで「良い」とされる1.5秒未満の表示を97%達成し、5Gローバンドに比べてもさらに際立つ差を示している。5Gローバンドは電波の到達距離が長い反面、伝送速度は高速になりにくい。それに対してミッドバンドでは到達距離は短くなるが、伝送速度が速くなる。このミッドバンドの特徴をユーザー体験向上に活かすべき、と鹿島氏は述べる。
ちなみに現在、5Gの人口カバー率は2029年には80%(前出の図2)に達すると予測されている。その中で、2023年末時点での5Gミッドバンドのカバレッジは全世界で45%、中でも北米やインド、中国では高い数値を示している。一方、日本を含むアジア太平洋地域(インド・中国を除く)は20%に留まっている(図12)。
図11 北米:ユーザー体験における5Gミッドバンドの重要性
出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P19より抜粋
図12 世界の5Gミッドバンドカバレッジ(2023年末)
出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P21より抜粋
回線速度やQoSサービスに収益化の余地
それでは、ユーザーはどのようなプレミアムサービス(高品質サービス)に対価を払うのか。エリクソンのコンシューマ部門でもこの点を調査している。
図13に示すように、まず多いのがデータ量による階層化、日本ではデータプランなどで広く普及しているサービスだ。そしてビデオストリーミングやゲームなどのアプリケーション・バンドル、さらに回線速度向上や最低スループットや低遅延を保証するQoS(Quality of Service)ベースのサービスなども、ユーザーから関心が寄せられている。
図13 5Gプレミアムに関するユーザー分析
出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P22より抜粋
最後に鹿島氏は、次のように述べて今回の発表を締めくくった。
「今後、5Gモバイルユーザーは17億人から56億人に急増し、トラフィックが3倍に増えます。それに対応するには5Gの強化が不可欠ですが、同時に事業者の収益性の確保も不可欠です。5Gは速度ベースやQoSベースのサービスに収益化の可能性があり、それらサービスを提供するためにはミッドバンド(MB)を整備し、その上に5G SAネットワークを構築していく。それが成長のカギとなるでしょう」(図14)。
図14 発表サマリー:モバイルユーザーは17億人から56億人へ
出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年6月版記者説明会」資料P23より抜粋