[特集]

対談:電波・周波数を語る(2):UWB/電子タグ(RFID)から802.11nまでの周波数

2006/11/13
(月)
SmartGridニューズレター編集部

次世代の高速無線LAN「802.11n」や、802.16e-2005に準拠した「モバイルWiMAX」などの登場を背景に、「電波・周波数」の割り当てとその有効利用が大きな注目を集めています。ここでは、その現状と課題について、上智大学 理工学部 電気電子工学科 服部 武 教授と、総務省 総合通信基盤局 電波部長 河内正孝氏に対談を行っていただきました。
服部教授は、移動通信の研究開発の第1人者であり、現在は次世代の無線技術であるOFDM/MIMO伝送、スケジューリングなどの研究に従事、 総務省 情報通信審議会 携帯電話等周波数有効利用方策委員会 主査としてもご活躍中です。河内部長 は、総務省電気通信技術システム課長、放送技術政策課長、さらに独立行政法人情報通信研究機構(NICT)理事などを歴任、注目される放送・通信分野の電波行政でバランスよくご活躍中です。(文中、敬称略、司会:インプレスR&D 標準技術編集部)

服部武 vs 河内正孝

上智大学 服部 武 教授 VS 総務省 電波部 河内 正孝 部長

 

UWBの開放と新しい433MHz帯の電子タグ(RFID)

—ところで、次に、具体的なお話として、最近開放されたUWBや無線タグ(RFID)などの無線PANの動向について、河内さん、いかがでしょうか。

【1】UWB

河内 UWB(Ultra Wide Band、超広帯域無線)は、ご存知の通り、通信距離は3~10m程度と短いですが、最大480Mbpsと極めて高速なデータ伝送ができるということで期待されています。UWBにつきましては、すでに制度化がされていまして、2006年8月にその省令が公布され、実際にUWBのサービスが、実用化できる環境が整いました。現在、それに基づいた製品が投入されつつあるところです。

それからUWBが使用する周波数の幅は非常に広い(3.1~10.6GHz=7.5GHz幅)ということで、その7.5GHz幅の周波数帯の中に、現在でも電波天文、地球探査衛星をはじめ、いろいろな用途の無線システムが使われています。

あるいは今後、携帯電話の第4世代なども予定されています。このような既存のシステムへの干渉がないように、あるいは将来のシステムのことも考慮して、電波の出力など技術的に厳しい条件を設けたうえで、実用化を認めているところです。

—服部先生、UWBが開放され使えるようになりましたが、研究者としてはどのように見ておられますか?

服部 UWBは、先ほど申し上げた、単位ヘルツあたり何ビット送るか(bit/sec/Hz)という周波数利用率からしますと、非常に低いわけですね。UWB は、5GHz帯の無線LAN(802.11a)との干渉は避ける配慮がされていますが、7.5GHz幅を使って、480Mbpsを実現するというのは、周波数利用率の面では非常に低いわけです。

しかし、スペクトル(利用周波数)を大きく広げて、他のシステムに対して「干渉・妨害に対する厳しい規制を前提に利用する」という概念は、新しい概念での電波の使い方である、と思います。

ただ、電波というのは、かけがえのない資産ですので、やはり干渉の問題ということを慎重に配慮していく必要があります。今回の日本の場合〔本サイト:活発化する電波/周波数の割り当て(1) 図3参照 〕ですと、UWBの低いほうの周波数であるローバンド(3.4GHz~4.8GHz)に対しては、2008年12月までは干渉検出は不要とし、それ以降については、例えば第4世代なり、無線システム用にライセンス・バンド(免許制の周波数帯)として使用するものに対して、干渉検出をして、干渉がある場合には送信レベルを大幅に下げる(-70dBm/MHz)規定がされたのです。一方、高い周波数であるハイバンド(7.250GHz~10.250GHz)は、そのような規定はありません。

ですから、私は日本として、これは非常に見識のある対応だと思います。ヨーロッパも、日本と同じように干渉に関してはかなりセンシティブに配慮しています。アメリカは国土をはじめ環境が違うところもあり、そこは今のところはフリーというか、そういう干渉検出というのは義務づけていないのです。

また、米国は屋外使用も一定の条件で認めていますが、日本は屋内限定です。電波の使い方というのは、一度、オープンになりますと、なかなかそれを元に戻すというのは難しいですから、使用状態や干渉を考慮して利用方法を決めていくということが必要だと思います。

アプリケーションとしてUWBの用途は、AV(オーディオ・ビジュアル)系に向いています。日本のUWBは電波干渉を与えないように、基本的に屋内使用に限定されていますから、親局(基地局)のほうは、持ち歩いて屋外で使用しないように、AC電源のコンセントに差し込んで使用するということが、義務付けられています。日本、米国、欧州で電力マスクや使用条件、干渉条件などの規定が違いますので、よく注意して機器の開発をすることが必要です。

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