[特別レポート]

第2ステップの実証実験に突入した「フィルム型ペロブスカイト太陽電池(PSC)」〈後編〉

横浜港大さん橋で2025年の実用化レベルを目指す
2025/01/29
(水)

株式会社マクニカ(以下、マクニカ)、ペクセル・テクノロジーズ株式会社(以下、ペクセル・テクノロジーズ)、株式会社麗光(以下、麗光)の3社(写真1)によって2024年11月12日に行われた「ペロブスカイト太陽電池 環境省実証実験開始式」(前編を参照)。 後編では、神奈川県・横浜港大さん橋の国際客船ターミナル屋上に設置された実証実験場(写真2)の概要と、2025 年に実用化レベルの到達を見込んで社会実装に向けて急ピッチに進む実証状況、さらには参加した各メディア記者との質疑応答も併せてレポートする。 なお、解説の都合上、前編と多少重複している内容があることをお断りしておく。

写真1 実証実験見学会現地での3社社長

左から株式会社マクニカ 代表取締役社長 原 一将氏、ペクセル・テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 宮坂 力氏(桐蔭横浜大学特任教授)、株式会社麗光 代表取締役社長 岩井 順一氏
出所 編集部撮影

写真2 神奈川県・横浜港大さん橋の実証実験場の外観

出所 編集部撮影

環境省の実証事業:2023年度から3カ年予定で実施中

 前編でも紹介したように、フィルム型のペロブスカイト太陽電池(Perovskite Solar Cell:PSC。以下、PSC)パネルは、ガラス型のPSCパネルに比べて、軽くて薄く、柔軟性(フレキシブル)があり、少ない光量でも発電できる特長をもつ。したがって、垂直なビルの壁面や湾曲部などにも容易に設置可能で、しかも室内あるいは曇天・雨天時などの弱い光でも発電できる。このため、従来の結晶シリコン型太陽光パネルでは設置できなかった場所での発電を可能にする「次世代パネル」として期待されている。
 いち早く社会実装を実現するため、国や業界では多角的な実証事業を推進している。この一環として、環境省では、脱炭素社会と地域活性化の同時実現を目指す「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業(環境省R&D事業)」を行っている。
 この実証事業にマクニカ、ペクセル・テクノロジーズ、麗光の3社が、「港湾など苛烈環境下におけるPSC(ペロブスカイト太陽電池)の活用に関する技術開発」を提案した(表1、図1)。同提案は2023年度に採択され、同年度から3カ年の予定で実験を行っている。

表1 2023年度に採択された3社の提案と実証期間

出所 各種資料をもとに編集部が作成

図1 環境省に提出した3社による実証実験の概要

封止層:ペロブスカイト太陽電池パネルを、水分等の液体が外部から内部に浸入しないように防止する透明なコーティング被膜を施した部分
出所 株式会社マクニカ、株式会社麗光、ペクセル・テクノロジーズ株式会社、「令和6年度 地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業(港湾などの苛烈環境下におけるPSCの活用に関する技術開発)大さん橋PSC実証事業開始式」

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