U-Bus Air仕様(無線)とU-Bus仕様(有線)
〔1〕U-Bus Air(無線)の仕組み
図2に示した、マンション内のガスメーターを、U-Bus Airを用いて、マルチホップ(多段中継)通信方式で接続する理由は、ガスメーターがパイプシャフト注11内に設置されたりするため、広域無線回線でのダイレクト通信が難しい場合があるからである。
このため、各ガスメーター間は、アドホック注12でなおかつマルチホップ通信を可能にする、超低消費電力(単三型リチウム電池2本で10年間動作)な新しい通信方式(U-Bus Air仕様。920MHz帯を使用)を適用することが想定されている(図3)。
このU-Bus Air仕様は、図3内の表に示すように、920MHz帯を使用し、送信出力は最大20mW、伝送速度は最大100kbpsとなっている。さらに、1ネットワークは最大50台までのガスメーターを接続可能で、そのホップ(中継)数は最大15段となっている。また、1ネットワークには、電波環境の変化などを考慮した冗長化(2重構成等)が必要な場合は、NCUを最大5台まで設置可能となっている。
図3 多段中継無線機(緑色の端末:U-Bus Air)によるメッシュネットワーク
〔出所 東京ガスの提供資料より引用〕
〔2〕U-Bus(有線)とNCU端末とAルートの関係
一方、ガス・スマートメータリングシステムにおけるもう1つの重要な「U-Bus仕様」(インタフェース仕様)は、基本的に通信端末とガスメーターを結ぶ、有線方式のインタフェースである。
U-Busはバス方式接続の網構成であり、その最大伝送速度は9600bps、さらにパケット通信方式(以前は回線交換方式であった)に対応させた。
NCU端末は、公衆回線とガスメーターを接続するゲートウェイ(相互接続装置)となっている。現在、NCU端末の実装としては、PHS回線(1.9GHz帯)を利用したPu-NCUがある。東京ガスでは、2012年12月より、前述した『マイツーホー』サービスの通信インフラとして導入を開始しており、現在5万台以上が導入済みとなっている。
このPu-NCUは、ウィルコム(現・ワイモバイル、Y!mobile)が開発した超低消費電力PHSチップを採用しており、リチウム電池3本で10年間駆動が可能となっている。
また、NCU端末とガスメーターは有線(U-Bus)で接続され、さらにNCU端末の下には多段中継無線端末(U-Bus Airを搭載)が接続される。この多段中継(マルチホップ)無線端末は、例えばマンション内の他のガスメーターとマルチホップ接続され、各家庭のガスの消費量をNCU端末経由でセンターに送信したりする(Aルート)。
さらに、必要に応じて他のU-Busインタフェース付き機器として、監視用のセンサーや警報器などの機器なども接続可能となっている。
〔3〕920MHz帯を使用する「Bルート無線機」
(1)「Bルート無線機」の果たす役割
また、前出の図2に示した、Bルートでは、家庭のガスメーターにU-Busで接続された「Bルート無線機」(開発中)と「HEMS」との間でECHONET Liteによる通信が行われる。
このとき、Bルート無線機は、920MHz帯を使用するTTC JJ300.10によって、HEMSと通信を行う。また、図4に示すように、アプリケーションとしてやり取りされる電文(メッセージ)は、ガスメーターが送信したU-Bus形式のパケットをBルート無線機が「ECHONET Lite形式の電文」に変換し、HEMSに届けられる(その逆も行われる)仕組みになっている。
図4 Bルート無線機の果たす役割
〔出所 東京ガスの提供資料より引用〕
(2)なぜガスメーターは電池駆動にこだわるのか
ガスメーターは、必ずしも系統電源(電力会社が提供する電源)が通っている場所の近くに設置されているわけではない。どのような環境でも設置できるようにするためには、電池駆動が必須になる。そのため、図4に示すように「リチウム一次電池(充電不可)3本で10年動作」ということになる。
この点は、電力のスマートメーターと大きく異なるところである。
〔4〕日本初の「U-Bus Air」仕様準拠の多段中継無線機を開発
写真2 導入が開始されたU-Bus Air仕様準拠の多段中継無線機の外観
〔出所 東京ガス「プレスリリース」、平成26(2014)年3月13日、http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20140313-01.html〕
2014年3月、東京ガスは、低消費電力設計による電池式で長期駆動可能な多段中継無線機(写真2)の導入を開始した、と発表した注13。この無線機は、「U-Bus Air」仕様に適合し、日本初の単三型リチウム一次電池2本で10年間長期駆動する多段中継無線機となっている。さらに、920MHz帯の無線が使用され、通信速度も従来と比較して高速化(100kbps)し、この無線機はすでに市場で導入が開始されている。
U-Bus/U-Bus Airプロトコル構成と各標準仕様書の対応
図5に、U-Bus/U-Bus Airのプロトコル構成と標準仕様の関係を示す〔前出の表2のテレメータリング推進協議会(JUTA)の各種仕様書を参照〕。
図5 U-Bus/U-Bus Airプロトコル構成と各標準仕様書の対応
〔出所 東京ガスの提供資料より引用〕
図5は、大きく分けて、
- アプリケーション〔各ガス会社が自由に作製する部分〕
- 機能仕様〔JUTA標準仕様(アプリケーションを除く〕
- 通信仕様(JUTA標準仕様:NET/MAC/PHY)
- Uバス共通仕様(JUTA標準仕様:データリンク層/物理層)
の4つに分けて構成されており、それぞれJUTA標準仕様書が対応している。
このような標準化が実現されると、それに基づいて作成された製品が、本当に標準仕様に従っているか、メーカーが異なっていても製品の相互接続性が保証されているかなどが課題となるが、それらの対応も行われている。
▼ 注11
パイプシャフト:水道・電気・ガスのメーターや配管などの諸設備を収納するスペースのこと。金属の扉箱であるためシールドされて電波が届きにくい傾向にあり、広域無線回線の不感地帯になることがある。
▼ 注12
アドホック:アクセスポイントを介さずにガスメーター同士が臨機応変に直接通信を行う方式
▼ 注13
東京ガス「プレスリリース」、平成26(2014)年3月13日、
http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20140313-01.html