M2Mで主導権を狙うETSI:TC M2MからoneM2M発足までの経緯
当初、3GPPや3GPP2などの呼び方と同じように、M2MPP(Partnership Project)という名称になるとも言われていたが、oneM2Mという組織が発足した背景にはどのような経緯があったのか。
1 つには、先にも触れたとおり、M2Mについては、ETSIがTC M2Mという技術委員会(TC)において長く標準化の審議を行い、すでに「M2M デバイス領域」(センサー機器など)と「ネットワーク領域」については標準化の審議が終了、現在はアプリケーション領域の審議に入っている。このETSIのTC M2Mは、あくまでも欧州の企業をベースにした会員(一部日本企業等も参加)で構成され話し合いが行われていたのだ。しかし、M2Mに関する関心が高まるなかで、M2Mがビジネスに直結する可能性が大きく見えてきたため、ETSIはこのTC M2Mを国際版にして、ビジネスを拡大(ビジネス収入の増大)する狙いとともに、組織の強化を図りたいという気持が強くあった。
もう1 つは、ETSIはモバイルの分野の3GPPなどの標準化活動で、大きな成功を収めてきたという経緯がある。このPP(Part ner-ship Project)の成功が大きかったため、これに乗じて、このTC M2Mを国際版にしてM2MPPという組織に発展させ、再び欧州が主導権を握りたいという気持から、2011年の4月に3GPPの会合の後で、ETSIが他のARIB(日)、ATIS(米)、CCSA(中)、TIA(米)、TTA(韓)、TTC(日)のSDOに声をかけたことが、oneM2Mの始まりとなった。
つまり、ETSIには、WCDMAやLTEなどのモバイル規格を策定した3GPPでの成功例を再現しようと、ETSIのTC M2Mという組織を国際版にし、3GPPと同様にM2MPPをつくり、欧州主導による新しいビジネスをつくり出したい、という狙いがあった。
そのため、それらの声がけがあった際に、当初は米国はどちらかというと疑心暗鬼でつき合い程度というところであったが、話が進むうちに、米国も「ひょっとするとこれはいろいろな業界とICTとの関係を強化したビジネスチャンスになるのではないか」と考え、2011年の秋頃から大きく態度が変わってきた。
このことは、標準化も重要であるが、標準化そのものよりも、むしろこの機会にoneM2Mをベースにして異業種を積極的に取り込み、業際的なプラットフォームの新ビジネスを見つけて推進し、傘下企業のビジネスチャンスに結び付けたいという、ビジネス先行型の米国の意図を感じる。
このように、新しいビジネスの展開がおこることを察知した途端に、急遽「oneM2Mの設立」に進展していったのである。それ以降、各フォーラムやアライアンスに声がけをした結果、あっという間にいくつかの組織からは賛同も得られたのだ。すでにoneM2Mとの連携組織候補として、各国SDOから50を超える組織が提案されている。
それでは日本、中国、韓国などアジア系の動きはどうだろう。韓国のTTAなどは「遅れてはなるものか」と、すでにいくつかの連携先のフォーラムを提案しているが、アジア系全体として見ると、現在は様子見の状況となっている。ただし中国の場合は、一応文章上はIoT(Internet of Things)を国家戦略として推進することになっているためあまり明確ではなく、国内での新しいビジネスを見つけるきっかけにしようとしている状況である。