2030年までのイケアの事業計画
イケアのビジネス理念は、「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング注4製品を幅広く揃え、より多くの方々にご購入いただけるよう、できる限り手ごろな価格でご提供すること」である。
イケア・グループの2030年までの事業計画は、図2に示す通りである。
図2 イケア・グループの事業計画(〜 2030年)
出所 イケア・ジャパンの提供資料をもとに編集部で日本語化
まず、図2の上段3つの目標があり、次のような意味が込められている。
- 世界中の多くの方々に身近に感じていただけるイケアブランドとなる
- 長期的な成長と収益性の追求
- より良い組織で働くことができ、より良いコワーカーを成長させていきたい
さらに、図2の下段に4つの成長戦略を掲げている。この4本柱の1つがサステナビリティ(持続可能性)として、ビジネスの根幹に置かれている。
現在、28カ国340店舗で展開しているイケア・グループでは、ビジネスとして成長していくうえで、環境や人々(社会)への影響が大きいと考え、そのような意味でも責任をもったビジネスへの取り組み方が必要だと考えている。
サステナビリティという考え方は、もともと長い間同社の中で息づいていたが、2012年の初版に続いて2016年に改訂された「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ ―イケア・グループ2020年までのサステナビリティ戦略」において公開された注5。
「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」とは?
「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」とはどのような意味なのだろうか?
イケアは、家具や雑貨などの家庭用品を多く生産して、広く人々に販売するというビジネスを行っているという性格上、多くの原材料やエネルギーを使用する。このようなビジネスの責任をもつ意味で、同社ではサステナブル、つまり環境破壊をせずに維持、継続できる持続可能な調達先から仕入れることが重要だと考えている。
「私どもは、コワーカー全体で16万人、またサプライチェーン全体を見た場合には100万人以上の方々が世界中で働いているので、それらの人々の支援もしていくことを自覚しています。また、遠くスウェーデンで開発したものを中国で生産をしたり、ポーランドあるいはイタリアで生産したものを日本に届けたりする工程において、環境への影響は大きいのです。この“ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ”には、ネガティブな影響を削減するという意味もありますが、ポジティブな影響を返していくという意味も込められています」(マティ氏)。
イケアの「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」では、2015年に国連総会で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)注6に対して、貧困の解消や環境保全、格差の是正など17の目標のすべてをサポートしていくことを公約(コミットメント)している。
▼ 注4
ホームファニッシング:Home Furnishing。寝室や浴室、キッチンなど生活全般に関する家具や雑貨(備品)などのこと。
▼ 注6
SDGs:Sustainable Development Goalsの略。人々が地球環境や気候変動に配慮しながら、持続可能な暮らしをするために取り組むための、世界共通の行動目標。国連に加盟する全193カ国が合意し、2015年9月の国連総会で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」として採択された。貧困の解消や環境保全、格差の是正など17の目標と、169の関連付けられたターゲットからなる。2030年までの達成を目指して、2016年1月に正式に発効された。