[特別レポート]

再エネ時代に交流(AC)の必然性はなくなったか?

― 直流380V給配電システムと国際標準化の最新動向 ―
2018/07/01
(日)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

スマートホーム、スマートビルをはじめ太陽光パネル(PV)、電気自動車(EV)などが主役となるスマートグリッド/マイクログリッド、再生可能エネルギー(以下、再エネ)時代を迎えて、かつて限定的に使用されていた電気通信用電源方式である直流48V給電システムは、データセンター用の直流380V時代へ進展し、最近では、直流48V、直流12Vなどを駆使する直流給電システムが家庭にまで普及しようとしている。その流れは大きな国際市場を形成し、国際標準の策定も活発化し、今まさに直流時代を迎えようとしている。
このような流れをとらえて、本記事は、株式会社NTTファシリティーズ データセンタービジネス本部担当部長(IEC SC22,SyCLVDC国内委員会委員長)である、廣瀬 圭一(ひろせ けいいち)氏の講演(注1)をもとにまとめたものである。

拡大する直流利用の市場

〔1〕直流適用分野における課題

近年、半導体ICを使用する機器・システムの増大によって、直流(DC:Direct Current)は、さまざま分野で広く利用され、今後も期待されている。図1は、英国に本社を置く建物設計会コンサル社「ARUP」注2が2017年に発表した、直流利用市場に関する資料である。

図1 直流給電の利用分野と直流市場の展望

図1 直流給電の利用分野と直流市場の展望

PoE:Power over Ethernet、イーサネット(LAN)の配線で利用されるUTPケーブル(より対線)を通じて直流(DC)電力を供給する技術。
出所 廣瀬圭一、「380VDC給電システムと国際標準化の動向」、2018年5月11日

この図からわかるように、直流は、データセンター(クラウド)から太陽光発電(PV)、照明器具(LED)、電気自動車(EV)や地下鉄や鉄道などの交通輸送分野に至るまで、非常に幅広い市場で、使用されている。

しかし、これらの市場において、直流ですべてうまく解決できているかというと、まだ課題もある。その1つは、直流への理解だけではなく普及に向けたさまざまな教育や啓蒙活動などが欠けている点である。2つ目は、直流に関する国際標準化の課題である。国際標準ができると、各分野のメーカーが、多彩な製品を市場に投入するので、ユーザーは利用しやすくなる。

そこで、タイミングを考慮した直流の国際標準が求められている。例えば、出張や海外旅行に出かけるときに、その国の仕様に合わせた電源コンセントがないと、電気を利用できず不便なことが多い。すでに交流(AC)のコンセントは、図2に示すように種類が多過ぎるため、過去には国際標準機関によってユニバーサル(国際共通でどこでも利用可能)なコンセントの規格がつくられた。しかし、「時(タイミング)すでに遅し」、その規格が実際に採用されたのは、ブラジルと南アフリカ共和国のみということになってしまった。

図2 交流(AC)コンセントの標準化の一例

図2 交流(AC)コンセントの標準化の一例

出所 廣瀬圭一「380VDC給電システムと国際標準化の動向」、2018年5月11日

〔2〕デジュール標準:IEC標準を中心に

このような標準には、実質的に業界標準となっているデファクト標準と、標準化団体などが策定したデジュール標準の2つがある。ここでは、デジュール標準の策定機関であるISO(電気・電子以外の産業主体)、IEC(電気・電子産業主体)、ITU(通信産業主体)の中で、特にIEC(International Electro-technical Commission、国際電気標準会議)の策定した標準規格を中心に解説する。

IECは、ISOと同様にJIS(日本工業規格)とも整合し、海外のみならず、国内の電気利用全体を考えたときにも、非常に重要な国際標準である。


▼ 注1
2018年5月9日〜11日開催のデータセンター展【春】(東京ビッグサイト)で行われた講演。

▼ 注2
ARUP:「Five minute guide to DC Power」

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