今後の展開:安全でレジリエンスに強い電力システムへの期待
以上、本誌では3回にわたって、2018年9月6日午前3時7分に発生した震度7(M6.7)の「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」によるブラックアウトについて、OCCTO検証委員会の検証内容を中心に解説してきた。
その結果、今回のOCCTO検証委員会の過酷なシミュレーションにおいても、ブラックアウトの再発を防止できる見通しが確認できた。
今後、ブラックアウト再発防止に向けた課題は多々あるが、例えば、次のような課題がある。
(1)北海道と本州を結ぶ北本連系設備は、間もなく30万kWが増設(計90万kW)されるが、さらなる増設が必要かどうか。また既存の他励式の北本連系設備を自励式にしなくてよいのか(自励式と他励式については表3参照))。
(2)ブラックアウトが発生する前に、需給バランスが取れる(電力の需要と供給が同量となること)特定地域を系統から分離させる「系統分離」(大きなマイクログリッドのようなもの)によって、その地域が停電することなく自立運転できるような統一的な規定を策定してはどうか(現在はない)。
(3)再エネの主力電源化時代を迎えて、太陽発電や風力発電などのFRT要件の見直しの必要があるのではないか(周波数について言えば、何Hzまで低下したら再エネを脱落させるかというような要件の見直し)
(4)2018年に発生した西日本豪雨や台風21号、北海道胆振東部地震などの多くの自然災害を踏まえ、経済産業省内に電力レジリエンスWG(災害に強い電力供給体制WG)が、2018年10月に設置されたが、ここで検討されている、レジリエンスの高い電力インフラ・システムの在り方の検討を、全国の電力会社にどのように反映させるか。
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現在、日本においても、電力自由化後の新しい電力システムに関して、VPPやV2Xなどをはじめとする、技術開発やそれに伴う制度改革なども活発に行われている。さらに、5G(第5世代)の商用サービス開始が間近に迫り、AIの実用化なども含めて、新しいICT(情報通信技術)の利用や適用が多くの分野で活発になっている。これらの新しい技術が電力システムとも融合するUtility 3.0の世界が目指す、「安全で安定した、かつレジリエンスに強い電力システム」への期待は、ますます大きくなってきている。(終わり)