[特集]

V2Gを実証した2018年度のVPP構築実証事業の成果

― 緊密化する卒FIT・EV/PHEV・蓄電池・ブロックチェーンの関係 ―
2019/05/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

100年に1度ともいわれる自動車革命が進行し、いわゆるCASE〔ツナガル・自動運転・シェアリング・電動化(EV/PHEV)〕時代が到来している。特に脱炭素化や分散エネルギーの面から、クルマの電動化は、2030〜2050年に向けた新たな「エネルギーの社会インフラ」としても注目されている。
一方、地球温暖化対策として、各国で急速に普及し始めている太陽光や風力による再生可能エネルギー(再エネ)は、2050年には石油・石炭など化石燃料をシェアで逆転する勢いである(注1)。日本政府は、2018年7月、「第5次エネルギー基本計画」を発表し、再エネを主力電源化することを明確にした。
このような動きを背景に、日本の次世代の電力システムとして取り組まれている2018年度のVPP構築実証事業の成果が、2019年3月29日に公表された。
ここでは、日本および世界におけるクルマの電動化の状況やその推移を見ていくとともに、VPP構築実証事業の成果を紹介し、2018年度から新たに追加されたV2G実証事業(V2Gアグリゲーター事業)に焦点を当ててレポートする。

CASE時代の到来とV2GとC-V2X

〔1〕CASE:4つの領域の同時進展

 パリ協定(2015年12月)の締結以降、地球温暖化対策に向けて、脱炭素化の実現は喫緊の課題となり、パリ協定が実行に移される2020年に向けて全世界で真剣な取り組みが開始されている。

 このような中、自動車メーカーにとって100年に1度のインパクトともいわれる自動車革命、すなわちエンジン車から電動車(EV/PHEV)へのシフトが進展している。ドイツのメルセデス・ベンツ(ドイツ本国では「ダイムラー」と呼ばれる)は、2016年9月に開催された「パリモーターショー2016」で、「CASE(ケース)」を含む中長期戦略を発表し、注目を集めた。

 CASEとは、

  1. Connectivity:コネクテッドカー(ツナガルクルマ。インターネット接続)
  2. Autonomous:自動運転車
  3. Shared & Service:カーシェアリング&サービス
  4. Electric:クルマの動力源の電動化(EV/PHEV)

の4つ領域の頭文字をとったものであり、IoTの進展を背景にCASE時代の到来を告げるものであった。この発表以降、CASEが示す4つ領域への取り組みが世界各国で急速に進んでいる(写真1、図1)。

写真1 メルセデス・ベンツの「CASE戦略」(東京モーターショウ2017での様子)

写真1 メルセデス・ベンツの「CASE戦略」(東京モーターショウ2017での様子)

出所 https://mb-live.jp/event/motorshow-2017-10-20/

図1 CASE(ツナガル・自動化・利活用・電動化)による自動車新時代の到来

図1 CASE(ツナガル・自動化・利活用・電動化)による自動車新時代の到来

出所 自動車新時代戦略会議(第1回)資料、平成30(2018)年4月18日

〔2〕V2GとC-V2X

 特にエネルギーと通信の両面から見ると、

  1. エネルギー(Electric)の面からは、V2G〔Vehicle to Grid、EVやPHEVなどの電動車の蓄電池を電力系統(Grid)に接続して充放電する技術、図2〕の開発が活発化し、
  2. 通信(Connectivity)の面からは、4G(LTE)や5G(NR:New Radio)などのモバイル通信技術(セルラー)を使用したC-V2X(Cellular-V2X注2)が開発されており、4Gに対応したLTE-V2Xや5Gに対応したNR-V2Xなどによる通信革命が活発になっている。

図2 V2G(Vehicle to Grid)のイメージ図

図2 V2G(Vehicle to Grid)のイメージ図

出所 https://www.tohoku-epco.co.jp/news/normal/__icsFiles/afieldfile/2018/10/04/b_1198372.pdf

 これらの動きに対応して、自動車関連の国際団体である5GAA注3では、自動車とICTの統合を目指してC-V2Xに取り組む一方、日本でも、自動車新時代戦略会議などで検討が重ねられ、CASEの動きなどを踏まえた中間整理が、2018年8月に発表されている注4

〔3〕日本の次世代自動車(xEV)の普及目標と現状

 次に、日本の次世代自動車(xEV)の普及目標と現状を概観してみよう。表1に示すように、

  1. 従来車(例:エンジン駆動車)は、2017年時点で63.6%を占めていたが、2030年には30〜50%と半分以下と大幅にシェアが縮小する。
  2. 次世代自動車(xEV)は、2017年時点で36.4%のシェアであったが2030年には、50〜70%と倍増の勢いである。

表1 日本の次世代自動車(xEV)の普及目標と現状

表1 日本の次世代自動車(xEV)の普及目標と現状

出所 自動車新時代戦略会議「中間整理」、平成 30(2018)年8月31日

 ここで、表1に示したクリーンディーゼル自動車を除く、次世代自動車(xEV)の種類を表2に示す。表2の左側に電動車(xEV)の共通要素である、電池、モーター、インバータ注5を示し、右側には各電動車の呼称や略称を示す。また、表2下段の※1〜※4に、各電動車の特徴について簡単に解説している。

表2 日本の電動車(xEV:BEV、PHEV、HEV、FCEV)の種類と例

表2 日本の電動車(xEV:BEV、PHEV、HEV、FCEV)の種類と例

※1:ハイブリッド自動車とは、エンジンとモーター(2つの動力)を搭載し、これらを効率的に使い分けたり、組み合わせたりして走行し、低燃費を実現する自動車。
※2: HEV(HV)のモーターを動かす蓄電池は、走行時や減速時のエネルギーを利用して自分で充電する。EVやPHEVのように家庭等の外部電源プラグ等からは充電できない。
※3:PHEV(PHV)は、よりEVに近づいたハイブリッド自動車。プラグイン(Plug in)とは、家庭等の外部の電源プラグに差し込んで充電できるという意味。
※4:FCEV(FCV)は、水素と酸素の化学反応によって発電した電気を使って、モーターを回して走る自動車のこと。燃料電池(FC)という蓄電池(EVのリチウムイオン蓄電池のような電池)を搭載しているのではなく、燃料(例:水素)そのものが電池なのだということを認識しておくことが重要である。
出所 自動車新時代戦略会議「自動車新時代戦略会議 中間整理」をもとに一部加筆修正、2018年8月31日

〔4〕世界の電動車の動向

 次に、図3に世界の電動車の動向〔パワートレイン(駆動装置)別〕を示す。IEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)が示した技術普及シナリオ(平均気温上昇の2℃未満達成ケース)注6が基となっている。

図3 世界のパワートレイン(駆動装置)別長期見通し:IEAが示した技術普及シナリオ(平均気温上昇の2℃未満達成ケース)

図3 世界のパワートレイン(駆動装置)別長期見通し:IEAが示した技術普及シナリオ(平均気温上昇の2℃未満達成ケース)

出所 経済産業省、「自動車新時代戦略会議(第1回)資料」、2018年4月18日

 図3から、次のことが見てとれる。

  1. 2020年の電動車の比率は15%であるが、2030年に32%、2040年に51%となり、電動車が50%を超える。ただしPHV、HVはエンジンを搭載しているので、エンジン搭載車の比率としては84%である。
  2. 2040年の電動車の構成は、PHVが20%、EVが15%、HVが15%となる。
  3. 2050年には、電動車が70%程度になりEVがHVを超え、PHVとEVの合計が50%程度に達し、大幅に脱炭素化に貢献するようになる。

▼ 注1
IRENA(International Renewable Energy Agency、国際再生可能エネルギー機関)他による「新たな世界 エネルギー変容の地政学」、2019年3月

▼ 注2
V2X:Vehicle to Everything。車とあらゆるモノが直接通信する技術。Everythingには、N(Network、ネットワーク。車とネットワークの通信:V2N)、V(Vehicle、車。車車間通信:V2V)、I(Infrastructure、道路側の通信設備。車と道路側の通信設備の通信:V2I)、P(Pedestrian、歩行者。車と歩行者間の通信:V2P)が含まれる。

▼ 注3
5GAA:5G Automotive Association、5G オートモーティブ・アソシエーション。5G(第5世代)等による無線通信の自動車への応用に取り組む業界団体。2016年9月に設立、本部はドイツのミュンヘン。自動車業界や通信業界を中心に、80社以上が加盟(2019年3月時点)。C-V2X(セルラーV2X)に関して、4G(第4世代)のLTE-V2Xや、5G(第5世代)のNR-V2X等の実現に取り組んでいる。http://5gaa.org/about-5gaa/about-us/

▼ 注4
自動車新時代戦略会議 中間整理

▼ 注5
インバータ(Inverter):バッテリー(電池)からの直流(DC)電流を交流(AC)電流に変換し、交流モーターを駆動する仕組み。

▼ 注6
パリ協定(2020年から実施)とは、産業革命前(1750年前後)と比べた地球の気温上昇を 2℃より十分下方に抑えること、1.5℃までに抑えるよう努力すること。さらに、できる限り早期に世界の温室効果ガスの排出量をピークアウト(頂点に達し減少に転じること)し、今世紀後半(2050年以降)に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成すること等が盛り込まれた。このパリ協定の実現に向けて、世界各国で対応が検討されている。各種機関が普及見通しを提示しており、上記IEAシナリオよりも大規模にEVが導入されるとの見通しもある。

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