[RE100加盟企業に聞く!]

大和ハウスグループの環境負荷(CO2)ゼロへの挑戦

─ 船橋市で日本初の「再エネ100%のまちづくり」を開始 ─
2019/11/01
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

船橋市で日本初の「再エネ100%のまちづくり」を開始

写真1 佐賀県佐賀市の「大和ハウス佐賀ビル」の外観(2018年2月竣工)

写真1 佐賀県佐賀市の「大和ハウス佐賀ビル」の外観(2018年2月竣工)

出所 https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20180301132143.html

〔1〕日本初の「再エネ自給オフィス」が稼働

―編集部 ところで、御社は2019年7月、千葉県船橋市に日本初の「再エネ100%のまちづくり」の開始を発表されましたが、どのようなプランなのでしょうか?

園田 これまでお話ししたように当社は、「SBT」「EP100」「RE100」を基本に方針を立てて事業を推進していますが、社内で検証してきたノウハウを、いかに社外に展開していけるのかという点がポイントとなっています。

 例えば、自社施設の一例ですが、佐賀県佐賀市に建設した、「EP100」と「RE100」対応の「大和ハウス佐賀ビル」(写真1。2018年2月竣工)注5は、井水・太陽熱利用のハイブリッド空調システムを導入し、一般建築と比較して2倍以上のエネルギー効率を達成しています。

 さらに、太陽光発電(83kW)と大型蓄電池(105kWh)も導入し、日本初の「再エネ自給オフィス」として実証実験を進めています。

 この建物をショールームとしてお客様にご案内することで、再エネ自給オフィスやZEBなどの建物の普及を推進しています。

〔2〕再エネ電気100%の船橋塚田プロジェクト

―編集部 これまでの実績を背景に、船橋塚田プロジェクト(表3)が誕生したのですね。

表3 船橋塚田プロジェクトのプロフィール

表3 船橋塚田プロジェクトのプロフィール

出所 https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20190710114923.html

園田 全社的にZEHやZEBなどの取り組みを推進している中で、千葉県船橋市で「EP100」と「RE100」を推進する新しいまちづくりをすることになりました。先進的なまちづくりを進めることで、再エネ電気100%による暮らしが日本全体に広がってほしいという強い願いもあります。

 船橋市の松戸徹 市長にもご理解いただき、取り組むことが決定しました。

〔3〕大和ハウスグループから再エネ電源を供給

―編集部 再エネ電気100%によるまちづくりについて、もう少し具体的に教えてください。

園田 図8が、船橋塚田プロジェクトの再エネ電気100%の流れです。再エネ電気の流れを簡単に示したものが、表4です。

図8 船橋塚田タウンへ供給される再エネ電気100%(RE100に準拠)の流れ

図8 船橋塚田タウンへ供給される再エネ電気100%(RE100に準拠)の流れ

出所 https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20190710114923.html

表4 船橋塚田プロジェクトの再エネ電気100%の流れ

表4 船橋塚田プロジェクトの再エネ電気100%の流れ

※非化石証書:再エネ電気等に由来する電気がもつ環境価値(温室効果ガスの排出がない等)を切り離して、取引可能としたもの。トラッキング付き(太陽光発電による電気か、水力発電による電気かという属性がわかる情報付き)とすることによって、環境価値由来の発電所として特定できる。
出所 各種資料より編集部で作成

〔4〕リアルタイムに再エネ電気を提供

―編集部 大和ハウスグループが、再エネ電気まで提供するとは驚きですね。

園田 はい。船橋塚田プロジェクトの最大の特徴は、大和ハウスグループの水力発電(再エネ)で発電した再エネ電気を採用するまちづくりです。これまで取り組んできたネット・ゼロ・エネルギータウン注6は、エネルギー面では一歩進化したまちづくりとなっています(図9)。

図9 「再エネを100%のまちづくり」を推進する船橋塚田プロジェクトの複合開発

図9 「再エネを100%のまちづくり」を推進する船橋塚田プロジェクトの複合開発

出所 大和ハウスグループ“脱炭素化社会に向けた取り組み”2019年7月31日

〔5〕再エネの普及と蓄電池の役割

―編集部 お聞きしていると、大和ハウスグループは、住宅・ビルの建設業でもあり、電力会社でもあり、新しい総合スマートシティ構築企業のようにも見えてきました。

園田 私たちは総合生活産業として業域を拡大させてきました。今回の船橋塚田プロジェクトでは、まちの中でつくった電気は、できるだけまちの中で消費する(地産地消)という方針のもとに、各家庭に蓄電池を設置します。

―編集部 それは、どれぐらいの容量の蓄電池ですか?

園田 蓄電池注7はリチウムイオン電池で、その容量は5.4kWhです。

 蓄電池を設置して、できるだけ自家消費したいと思いますが、実証経験の結果から、一般的な住宅では、どんなに頑張っても自家消費できる割合は50%未満です。50%以上は、売電によって外部の系統(電力会社の送電線)に流れています。そうすると系統側からは、「系統に負荷がかかるので、再エネをこれ以上,系統に流さないでください」と、抑制されてしまうのです。

 そこで、クラウドで管理しながら、住宅間で連携して電気をやり取りし、系統に流れないように電気を融通しあうようにするのです。すでに愛知県豊田市で、「セキュレア豊田柿本」(大和ハウス工業が提供)という、電力融通やエネルギー自給住宅を実現し、うまく運用しています(2017年9月)注8


▼ 注5
大和ハウス佐賀ビル:鉄骨造2階建、延床面積2444.57m2(739坪)。雨・曇天日を除く。

▼ 注6
街で使うエネルギー(年間)を、街の中で創出するエネルギー(年間)が上回るまちづくり。

▼ 注7
大和ハウスグループが出資するエリーパワー社製(東京都品川区)。

▼ 注8
https://www.daiwahouse.com/sustainable/eco/products/2016_9.html

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