[特集]

【創刊7周年記念】 第36回 太陽光発電シンポジウムレポート 2050年に300GWの太陽光発電の導入へ

― 再エネ自立化とCO2の80%削減を目指した新ロードマップ ―
2019/12/12
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2050年にCO2排出量80%削減をどう実現するか?

 それでは、パリ協定を実現するために、日本政府が国連に提出した2050年までに80%の室温効果ガス(CO2)の排出削減目標を実現するにはどのような施策が求められるのだろうか。

〔1〕CO280%削減に必要な社会変革

 現在のエネルギー消費構造を、次の内容で転換していく。

  1. 社会の基盤となっているコミュニティのあり方を変革(社会変革)し、効率的エネルギーを利用する暮らし方や、企業における製造・輸送の方法を改革し、そこで利用するエネルギーの大半を「電力化」する。
  2. (1)の電力を、石油や天然ガスなどCO2を大量に発生する1次エネルギー(化石燃料)を使用するのではなく、大半を非化石化(再エネ化)する。

〔2〕CO280%削減への道筋

 具体的にCO280%削減を実現するには、次の3つの施策が求められる。

  1. 省エネの実現:現在実施している政策と、引き続き今後の社会変革によって、2050年までに、2015年比で約30%の省エネを実現する。
  2. 電力へのシフト:(1)に加えて、消費エネルギーのうちの約50%(半分)を「化石燃料(ガス・石油等)から電力へ」シフトさせる。電力化による効率の向上(高効率化)によって、省エネは2015年比で1/2まで削減可能である(電力消費は1.3倍となるがこの増分以上に、化石燃料の消費を減少できる)。
  3. 電力の低炭素化:消費電力のうち、CO2フリーの電源(再エネ)比率を約2/3、消費電力量で約7,000億kWh/年(日本の総消費電力量:約1兆kWh/年)まで高める。これによって、CO2排出量は2015年比で約1/3になるが、これでも政府が目標とするCO2の80%削減にはなお不足である。

JPEAビジョン:2050年に最大300GWACへ

 太陽光発電協会(JPEA)が、2017年(前回)に発表したJPEAビジョン「太陽光発電2050年の黎明」では、2050年の太陽光発電はACベースで200GW(200GWACとも表記)の導入を想定したが、CO2排出量に関しては、今回のシミュレーション(後述)から、政府の「2050年の80%削減目標を実現する」には導入量が不足であった。

 今回のJPEAビジョン「PV OUTLOOK 2050」では、政府の出した2050年の80%削減目標に近づけるため、後述するように、かなり具体的なシミュレーション(後述の図6参照)が行われた。このシミュレーション結果に基づいて、太陽光発電の想定導入量が見直され、表2に示すように、2050年最大化ケースでは200GWACの1.5倍の300GWACと設定された。

表2 2050年に至る太陽光発電の想定導入量(下表の解説を参照のこと)

表2 2050年に至る太陽光発電の想定導入量(下表の解説を参照のこと)

出所 太陽光発電協会(JPEA)「第36回太陽光シンポジウム」(2019年11月6日~7日)をもとに一部加筆して編集部作成

再エネの主力電源化に向けたFIT制度の抜本見直し

〔1〕想定導入量300GWACの設置場所

 経産省・NEDOの調査では、日本の再エネの導入ポテンシャル(将来、導入が可能な発電設備の容量)は、約700GWDCと報告されているが、JPEAビジョンにおける2050年最大化ケース(前出の表2)では、表3に示す各太陽光パネルの導入場所の総計は420GWDC(パワコンの交流出力:300GWAC)と想定された。

表3 太陽光発電の想定導入量(2050最大導入ケース)における導入場所

表3 太陽光発電の想定導入量(2050最大導入ケース)における導入場所

出所 太陽光発電協会(JPEA)「第36回太陽光シンポジウム」、2019年11月6日~7日

 表3に示すように、その導入場所は大きく、

  1. 「需要地設置」が147GWAC:住宅、非住宅(オフィスビル、駐車場等)
  2. 「非需要地設置」が153.3GWAC:非農地(河川・道路等のインフラ)・農業関連(耕作地等)

と分類され、それぞれほぼ半々程度となっている。表3から、今後は「非住宅建物」や「農業関連」への導入が重要となる。

 また、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の中間整理(第3次)注11では、現在、FIT制度(再エネの固定価格買取制度)の抜本見直しが行われているが、見直しを行うに当たって、次に示すように、再エネの主力電源化に向けた整理・検討も行われている。

〔2〕2つの電源モデル:「地域活用電源」と「競争電源」に整理

 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の中間整理(第3次)では、再エネの主力電源化に向けて、現在普及している多様な再エネ電源を、「地域活用電源」と「競争電源」の2つの電源モデルに整理して検討が行われている。具体的には、

  1. 表3に示した「需要地」に設置される住宅用太陽光発電や小規模事業用太陽光発電のほか、その地域にある小規模地熱発電や小水力発電、バイオマス発電なども含めて「地域活用電源」として位置づける。
  2. 表3に示した「非需要地」に設置される大規模事業用太陽光発電(メガソーラー)や風力発電などは、今後、コスト競争力を高め、FIT制度から自立化し競争力のある電源への成長が見込まれる「競争電源」として位置づける。

 このように、各電源ごとの特性に応じた制度的なアプローチが検討され始めている。


▼ 注11
再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会 中間整理(第3次、2019年8月20日)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/index.html
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/20190820001_01.pdf

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