[特集]

【創刊7周年記念】 第36回 太陽光発電シンポジウムレポート 2050年に300GWの太陽光発電の導入へ

― 再エネ自立化とCO2の80%削減を目指した新ロードマップ ―
2019/12/12
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2020年前後に「ストレージパリティ」が実現へ

 再エネの主力電源化の動きを加速するため、政府の各委員会の活動やその報告書などが次々に発表されているが、最近では太陽光と蓄電池(ストレージ)の組み合わせが注目されている。

 ここでは、グリッドパリティ(Grid Parity)とストレージパリティ(Storage Parity)について紹介する。

〔1〕グリッドパリティは実現へ

 FITの導入によって普及した太陽光発電(PV)は急速に導入コストが低下し、すでにグリッドパリティは、図9左に示すように実現されつつある。グリッドパリティとは、電力会社(系統)から提供される発電コストに比べて、太陽光発電の発電コストが、同等あるいはそれ以下になるという意味である。

図9 グリッドパリティ(左)とストレージパリティ(右)のイメージ(従量料金=基本料金+電力量料金±燃料費調整額+再エネ賦課金)

図9 グリッドパリティ(左)とストレージパリティ(右)のイメージ(従量料金=基本料金+電力量料金±燃料費調整額+再エネ賦課金)

出所 経済産業省、平成29年度新エネルギー等導入促進基礎調査「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」(株式会社三菱総合研究所)、2018年2月28日

 グリッドパリティが実現されると、FITなどの制度的な優遇措置などがなくても太陽光発電は自立して普及し、新しい再エネ市場を形成できる。このため、太陽光発電に関するグリッドパリティは、表4に示す2025年の価格目標である7円/kWh時点でも引き続き実現され、太陽光発電の新しい競争市場に向けてさらに進化していくことになる。

表4 FITの対象電源(太陽光)と調達期間、支払い単価 (資源エネルギー庁提供)

表4 FITの対象電源(太陽光)と調達期間、支払い単価 (資源エネルギー庁提供)

出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場の概要について」(2019年10月)から一部抜粋

〔2〕ストレージパリティも実現可能な時代へ

 一方、これまで昼間しか発電できない太陽光発電の電気を、蓄電池に貯めて利用できないか、という期待があったが、蓄電池コストの低下のメドも立ってきたため、ストレージパリティの可能性が出てきた。

 ストレージパリティとは、需要家にとって、蓄電池を導入するほうが導入しないより経済的になるため、自発的に蓄電池の導入が進む状態のこと、すなわち「太陽光+蓄電池」の発電コストが、系統から提供される電気のコストと同等かそれ以下になることを意味する(図9右)。ストレージパリティは、自家消費型のエネルギー供給形態を実現する、卒FIT時代に期待されている形態の1つなのである。

 すでに経済産業省は2018年4月に、「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」報告書を発表。FITの期限が過ぎた太陽光発電と組み合わせることによって、2020年前後には「ストレージパリティ」が達成可能であることを示した。

〔3〕ストレージパリティの4つの形態

 また、経済産業省は、太陽光発電を保有している平均的な住宅において、蓄電池を導入し、太陽光発電による電気を蓄電して自家消費し、電力会社からの電力購入を抑制することによって、投資回収が可能な蓄電池システムの目標価格を「6万円/kWh(耐用年数10年の場合)」あるいは「9万円/kWh(耐用年数15年の場合)」と設定している注12

 すなわち、蓄電池価格が下がれば、ストレージパリティが実現可能となることを提示した(従量料金の電気料金の場合)のである。

 具体的には、すでに太陽光発電を導入・設置(PV設置費用はFITによって回収済み)している平均的な一般住宅で、「ストレージパリティ(PVコスト:21円/kWh)」が実現可能となるのは2020年前後と見られている(図10の第1形態)。

 また、低圧(10kW未満の住宅)需要家に「太陽光発電と蓄電池をともに新規導入」する場合のストレージパリティは、2020年代の後半になると予測されている(図10の第2形態)。事業用の場合のストレージパリティは、2032年以降に、図10に示す第3形態、第4形態となると予測されている。

 テスラ・モーターズ・ジャパン(略称:テスラ)は、2019年10月15日、日本における2019年11月からの卒FITのスタートに合わせて、また日本のVPP時代の到来を見据えて、低価格なリチウムイオンによる家庭用蓄電システム「Powerwall」(パワーウォール)を2020年春から日本で発売することを発表した注13

 その蓄電池容量は13.5kWh(4人世帯が消費する約1日分の電気の蓄電容量)で、価格は99万円(7万3,000円/kWh。税抜)と、従来の市場価格に比べ低価格となっており、ストレージパリティが現実のものになりそうな勢いとなってきた。


▼ 注12
資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの自立に向けた取組の加速化(多様な自立モデルについて)、2018年11月21日の12ページ

▼ 注13
https://www.tesla.com/jp/blog/powerwall_launch_japan
https://www.tesla.com/jp/powerwall

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