[特集]

【創刊7周年記念】 第36回 太陽光発電シンポジウムレポート 2050年に300GWの太陽光発電の導入へ

― 再エネ自立化とCO2の80%削減を目指した新ロードマップ ―
2019/12/12
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2050年300GWACに至る太陽光発電の想定導入量

 図5は、2050年に至る太陽光発電の想定導入量(ACベース)を示したものである。

図5 2050年に至る太陽光発電の想定導入量【前出の表2に示す最大化ケース:300GWACの場合】

図5 2050年に至る太陽光発電の想定導入量【前出の表2に示す最大化ケース:300GWACの場合】

出所 太陽光発電協会(JPEA)「第36回太陽光シンポジウム」、2019年11月6日~7日

 太陽光発電の導入量は、2030年代は4〜6GW/年で推移するが、低コスト化・CO2削減などの要求から、2040年代後半以降2050年頃までは、一転してリプレースや増設分を含めて、10〜20GW/年という大幅な導入量が想定されている。

 全体の流れは、2030〜2031年頃を境に、FIT電源(青色)から自立導入型(橙色。あるいは自家消費型)に切り替わっていく。特に、FITから外れた非住宅の事業用電源(黄色。10kW以上)は、自立電源として明確に主役になってくる。

 また2039〜2050年は、10kW以上のリプレース&増設電源(緑色)も増大していることがわかる。

電力需給シミュレーションの検証方法と蓄電池など

〔1〕検証の手法

 JPEAでは、「PV OUTLOOK 2050 改訂版」を策定するうえで、今後想定される太陽光発電の導入量が実現した場合に、系統制約下において、実際にどの程度の発電電力量を利用できるかという、2050年における電力需給のシミュレーションの検証も行われた。

 検証の手法としては、1時間単位での電力の需給バランス、調整力の確保、地域間連携線の制約を考慮した、電力の需給モデルが使用された(詳細は上述の「PV OUTLOOK 2050 改訂版」を参照)。

〔2〕電力需給シミュレーションにおける「EV」「給湯器」「蓄電池」の役割

 同電力需給シミュレーションでは、図6に示すように、特に、

  1. EV(電気自動車。移動する蓄電池)
  2. HP給湯器:デマンドレスポンス(DR、電力の需要側応答)資源として重要な役割を果たす需要側のヒートポンプ(HP)給湯器
  3. 蓄電池:家庭などに設置される定置式蓄電池

などが重要な役割を果たした。

図6 今回のシミュレーションにおける蓄電池等の扱い

図6 今回のシミュレーションにおける蓄電池等の扱い

※上記に内容および数値の算出法
・蓄電池高位・中位・低位:蓄電池の設備容量が高い・中くらい・低い、を示す。
・需給バランス用:5億kWh=300GW(3億kW=30,000万kW)×時間率1.67h(1.67時間分の太陽光設備の稼働電力量)
・4kW住宅用の場合6.7kWh=4kW×時間率1.67h(1.67時間分の稼働電力量)
・二次調整力:300GW(=3億kW=30,000万kW)×0.1=3000万kW
・三次調整力 :300GW(=3億kW=30,000万kW)×0.2=6000kW
・二次調整力:一般送配電事業者からのDR(デマンドレスポンス)指令に対して、調整力として動作するまでにかかる時間(応動時間)が、数分以内のリソース(蓄電池)で、調整力としての継続時間が15分以上のリソー
・三次調整力:同じく、発動までの応動時間が、15~30分以内と遅いリソースであるが、継続時間が数時間以上と長いリソース
出所 太陽光発電協会(JPEA)「第36回太陽光シンポジウム」、2019年11月6日~7日

電力需給シミュレーションによる試算結果

 図6の条件を前提にした電力需給シミュレーションの検証では、いくつかの試算結果が得られた。ここでは、そのうち、「発電抑制率の試算結果」と「2050年の試算結果の電源構成」について見ていく。

〔1〕発電抑制率の試算結果:抑制率は7%へ

 結論から見ると、2050年最大化(300GWAC、表2)で蓄電池高位ケース(図6)では、太陽光発電の抑制率は7%(図7)となった。

図7 試算結果:太陽光発電の抑制率を低下させるには蓄電池の導入が重要

図7 試算結果:太陽光発電の抑制率を低下させるには蓄電池の導入が重要

出所 太陽光発電協会(JPEA)「第36回太陽光シンポジウム」、2019年11月6日~7日

 これに対して、同じく2050年最大化(300GWAC、表2)で蓄電池低位ケース(図6)では、太陽光発電の抑制率は28%(図7)にも上昇した。この結果、蓄電池高位ケースでは、太陽光で発電した電力は、より多くの電力を蓄電できるため抑制率は7%と低くできる。すなわち蓄電池の導入量容量を大きくすれば、系統へ流れる電力を少なく抑えることが可能となる(系統への負荷が小さくなる)ことが判明した。

 これによって、太陽光などの再エネ環境では、蓄電池の導入量によって、再エネ発電の抑制量を最適化できることが確認された。

 次に、これを図7と図8をもとに、具体的な数値で見てみよう。

〔2〕2050年の電源構成の試算結果:太陽光は31%へ

 2050年の電源構成(エネルギーミックス)は、図8のような構成になった。

図8 試算結果:2050年の電源構成⇒最大化ケースで太陽光は31%へ

図8 試算結果:2050年の電源構成⇒最大化ケースで太陽光は31%へ

出所 太陽光発電協会(JPEA)「第36回太陽光シンポジウム」、2019年11月6日~7日

  1. 図8に示すように、2050年における太陽光発電による電力量のシェアは、「2050標準」ケースで20%(図8の右から2番目の棒グラフ)、「2050最大化・蓄電池高位」ケースで31%(図8右端の棒グラフ)と試算された。
  2. 具体的な太陽光の総発電電力量は、図7に示すように、それぞれ2,508億kWh(2050標準)と4,213億kWh(2050最大化・蓄電池高位)となり、そのうち2,471億kWhと3,927億kWhが抑制されずに消費された。このときの抑制率は、前出の図7に示すように、1%(=2,508億kWh÷2,471億kWh)と7%(=4,213億kWh÷3,927億kWh)であり、2050最大化・蓄電池低位(図7の抑制率28%)に比べて、かなり低く抑えることができた。
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