セールスフォースの脱炭素戦略
講演レポートに入る前に、セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース。表1)が取り組んでいる、パリ協定の実現に向けた「脱炭素戦略」を紹介しておこう。同社は、温室効果ガスの排出量のネットゼロを目指して、積極的な取り組みを行っている。
表1 セールスフォース・ドットコム(Salesforce)のプロフィール(敬称略)
出所 https://www.salesforce.com/jp/company/overview/ およびhttps://www.salesforce.com/content/dam/web/ja_jp/www/documents/reports/2019-stakeholder-impact-report.pdf等をもとに編集部で作成
〔1〕2017年に温室効果ガス排出ネットゼロを達成
クラウドベースの顧客管理システム(CRM:Customer Relationship Management)分野で、世界をリードしているセールスフォースは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の実現とともに、低炭素化社会の実現に向けて、グローバル戦略と技術革新を進めている。
クラウド企業が環境に及ぼす直接的で最も大きな影響は、データセンターにおける電力消費によって温室効果ガス(CO2)を排出することである。このためセールスフォースは、クリーンな再生可能エネルギー(以下、再エネ)の調達に注力しつつ、業務全体でのエネルギー効率改善に努めている。
同社は、2013年に、再エネで全データセンターを稼働させる初のクラウド企業となり、2015年には、この取り組みを同社の全世界の拠点へと拡大した注1。
さらに、2017年には、温室効果ガスを「回避」する設備(排出ガスゼロで製造された機器など)や、再エネの導入による排出ガスの「削減」、炭素クレジットによる「オフセット」(相殺)などの3つのステップを実施しながら、温室効果ガス排出量の実質ゼロを達成した。
その後、セールスフォースは2019年9月に、これまでの一連の実践をベースに、CO2の排出量や削減量などを数値化し、その分析結果を提供できる「Salesforce Sustainable Cloud」を発表し、顧客の気候危機に対するカーボンニュートラルな取り組みを支援できるクラウドを提供している注2。
〔2〕意欲的な100%再エネ化への取り組み
現在、セールスフォースは、
- 全世界の事業活動で100%再エネ化を目指すこと
- 顧客にカーボンニュートラルなクラウドを提供し、温室効果ガス排出量を実質ゼロで事業を運営できるよう支援すること
- グリーンビルディング認証を取得し、革新的なグリーンオフィス構想を推進すること
- 人材、技術、リソースを活用して、世界中の環境運動を支援注3すること
を基本に、2050年までに正味ゼロ(ネットゼロ)の温室効果ガス排出量への移行を加速するためのグループ「Net-Zero 2050チーム」注4に参加している。さらに、表2に示すように、100%再エネで動くインターネットを目指す連合など、脱炭素化を目指す先進的な国際団体に参加して活動を展開している。
表2 セールスフォースが参加している脱炭素化を目指す国際団体例
以上のように、セールスフォースが推進している脱炭素戦略を見ると、同社がいかに力を入れて、パリ協定の実現に意欲的に取り組んでいるかがわかる。
▼ 注1
https://www.salesforce.com/jp/company/sustainability/vision/
▼ 注2
Sustainability Cloudを発表 企業の気候変動に対する効果的なアクションを推進
▼ 注3
https://www.salesforce.com/jp/company/sustainability/vision/