グテーレス国連事務総長が発した“Code Red”(厳戒警報)
国連事務総長であるアントニオ・グテーレス(Antonio Guterres)氏は、2021年8月9日、3つの声明を発表した。
1つ目は、「世界の先住民の国際デー(International Day of the World’s Indigenous Peoples)」に合わせた声明注1。2つ目は、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に寄せる声明注2。そして、3つ目は、IPCC(The Intergovernmental Panel on Climate Change、国連気候変動に関する政府間パネル)の報告書に関する声明注3である。
IPCCの報告書に関するグテーレス氏の声明では、冒頭で「(この報告書は)人類に対する厳戒警報(a code red for humanity)」という強い言葉が使われている。さらに、「警鐘が大音量で鳴り響いている(The alarm bells are deafening)」という表現も使われている。海外のさまざまなメディアでは、最初の文面で使われた“Code Red(厳戒警報)”という言葉を強調して報道しているものも多かった。
それでは、グテーレス事務総長が、ここまで強い言葉を使って呼びかけたIPCCの報告書とは、どのような内容なのだろうか。
IPCCの位置づけとその組織構造
IPCCは、1988年に国連の専門機関である世界気象機関(WMO:World Meteorological Organization)と国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)によって設立された政府間組織であり、各国政府に対して、気候政策の策定に関する科学的情報の提供を目的としている。本稿執筆時点で、世界195カ国注4がIPCCのメンバーとなっている。
組織としては3つの作業部会(WG:Working Group)と1つのタスクフォース(特別作業班)から構成されている(図1)。
図1 IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の組織図
TSU:Technical Support Unit、技術支援ユニット(組織)
TFI:Task Force on National Greenhouse Gas Inventories、国別の温室効果ガス(CO2)排出/吸収(量)に関する計算/報告に関する、手法やソフトウェアの開発/改訂を行う作業班
出所 気候変動に関する政府間パネル
気象庁のWebサイトには、IPCCにおけるそれぞれの作業部会とタスクフォースの役割について、表1のように解説している。
表1 IPCCの各作業部会とタスクフォースの役割
▼ 注1
Secretary-General’s message on the International Day of the World’s Indigenous Peoples
▼ 注2
Secretary-General’s Message to the Nagasaki Peace Memorial on the 76th Anniversary of the Atomic Bombing of Nagasaki
※日本語訳は「長崎平和祈念式典に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ」
▼ 注3
Secretary-General’s statement on the IPCC Working Group 1 Report on the Physical Science Basis of the Sixth Assessment
※日本語訳は「IPCC 第6次評価報告書 第 Ⅰ 作業部会報告書(自然科学的根拠)に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長声明」
▼ 注4
195カ国のリストは、以下のサイトから確認することができる。
・List of IPCC Member Countries