第6次評価報告書
第 Ⅰ 作業部会報告書の作成プロセス
図2 『第6次評価報告書 第 Ⅰ 作業部会報告書(自然科学的根拠)』の表紙※
※報告書の表紙はアーティストであるアリサ・シンガー(Alisa Singer)による“Changing”(変化)というアート作品である。シンガー氏は2014年に「気候変動のアート(The Art of Climate Change)」というシリーズを発表している。
【参照】 https://www.environmentalgraphiti.org/about-folder
出所 https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_Full_Report.pdf
今回、グテーレス国連事務総長がコメントした報告書は、表1に示した組織の中の第Ⅰ作業部会が発行した“The Working Group I contribution to the Sixth Assessment Report”であり、“Climate Change 2021 − The Physical Science Basis”という表題が付いている(図2)。日本語では『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 第Ⅰ作業部会報告書(自然科学的根拠)』などと訳されている(本稿では以降は、『第Ⅰ作業部会報告書』と表記する)。
今回の『第Ⅰ作業部会報告書』の本編注5は、3,949ページにも及ぶ膨大な報告書となっているが、IPCCによると、この報告書の完成には66カ国から集められた234人の専門家がかかわっている注6。その他にも、執筆協力者(contributing authors)として517人がかかわった。
彼らはこの報告書のために、1万4,000本以上の論文から引用を行っている。レビュー(査読)は専門家と政府関係者によって行われ、プロセスも徹底している。今回の公開までに3回の査読を行っているが、その過程で7万8,007件のレビューコメントが寄せられ、そのすべてについて回答され、すべてがオープンにされている。執筆者、そしてコメントをするレビュアーは公募である。
日本からも主執筆者(統括執筆責任者の下、特定の節の作成を担当)として7名の専門家、査読編集者(査読コメントが、主執筆者らによって適切に検討・処理されているかの確認)として3名の専門家がこの報告書の作成にかかわっている注7。
報告書の承認とこの後のプロセス
2021年7月26日〜8月6日に、オンラインで開催されたIPCCの第54回総会およびIPCCの第Ⅰ作業部会 第14回会合では、この4,000ページ近くの報告書の冒頭に載っているSPM(The Summary for Policymakers、政策決定者向け要約)注8と呼ばれる政策決定者向けの内容(全42ページ)が承認されると同時に、『第Ⅰ作業部会報告書』の本体が受諾されている。
今後は、表2で示したプロセスを経て、残りの部会(WG2、WG3)の報告書の承認が行われ、最終的には2022年9月をメドに、『第6次評価統合報告書』として採択されることとなる。
表2 最終目標である『第6次評価統合報告書』発行までのプロセス
出所 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書 第 Ⅰ 作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について)」をもとに筆者作成
▼ 注5
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_Full_Report.pdf
▼ 注6
Climate change widespread, rapid, and intensifying
▼ 注7
IPCC 『第6次評価報告書 第 Ⅰ 作業部会報告書(自然科学的根拠)』の日本からの執筆者等は以下を参照。
https://www.jma.go.jp/jma/press/2108/09a/ipcc_ar6_wg1_ap.pdf
▼ 注8
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_SPM.pdf