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アサヒグループのカーボンゼロへの挑戦!

─ 原料生産から販売までのバリューチェーン全体で展開へ ─
2021/11/05
(金)
篠田 哲/インプレスSmartGridニューズレター編集部

「アサヒカーボンゼロ」の実現に向けた具体的な取り組み

〔1〕6社で燃料電池による大型トラックの走行実験を開始へ

―編集部 燃料電池大型トラックの走行実証について、具体的な内容をお聞かせください。

原田 国内の商用車全体を見ると、大型トラックのCO2排出量は全体の約7割注9を占めており、また、アサヒグループのバリューチェーン全体における輸送(下流)からのCO2排出量は全体の5%を占めています。こうした観点からも排出削減は重要な課題となっています。

 そこで、大型トラックのCO2排出量を削減するために、FC(燃料電池)大型トラックはどの程度有効かなどを検証することを目的として、走行実証を行います(図7)。今回は、アサヒグループのほか西濃運輸、NEXT Logistics Japan(NLJ)、ヤマト運輸、トヨタ自動車、日野自動車と連携して実施します。

図7 燃料電池大型トラックのイメージ

図7 燃料電池大型トラックのイメージ

出所 アサヒグループ提供資料

 大型トラックは、十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められ、その電動化には、エネルギー密度の高い水素を燃料とする燃料電池システムが有効とされています。燃料電池大型トラックは、航続距離の目標を約600kmとし、トヨタ自動車と日野自動車が共同で開発します。そしてアサヒグループとNLJ、西濃運輸、ヤマト運輸、トヨタ自動車の5社が、各社の物流業務で使用しながら走行実証を行う予定です。走行実証の開始は2022年春を予定しています。

〔2〕オーストラリアでも再エネ利用の電気トラックを導入

―編集部 海外における物流分野の取り組みはどうでしょうか。

原田 すでに、オーストラリアのカラドック・ソーラー・ファームの太陽光発電所(出力112MW)で発電された再エネ電力で走行する、電気配送トラックを導入しています(図8)。航続距離は最大250kmが可能で、オーストラリア・メルボルン北部の配送センターからメルボルン市内の小売店まで、製品を輸送しています。

図8 再エネ電力利用の電気配送トラック

図8 再エネ電力利用の電気配送トラック

出所 アサヒグループ提供資料

〔3〕すでにビール4社による共同配送も

原田 さらに、環境負荷の低減と、業界における長距離トラック輸送におけるドライバー不足への対応を目的として、4年前の2017年9月から、キリンビール、サッポロビール、サントリービールと当社グループの4社による共同配送も実施しています。


▼ 注9
約7割:車両総重量3.5t超のトラック・バス、日野自動車調べ(2020年9月末現在)。

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