地域マイクログリッドの構築に向けた3ステップ
政府は、「地域マイクログリッド構築」の実現に向けて、令和2(2020)年度から令和4(2022)年度までの3年間に、系統線を活用するマイクログリッド構築支援事業を展開し、先行的なモデルを構築して実証し、地域マイクログリッドの制度化およびその普及を目指している。
そのため、図6に示すように、①事前の全体構想の検討、②導入プランの作成、③マイクログリッドの構築、の3ステップで推進している。
また、地域マイクログリッドの構築・導入は、導入するエリアの「配電網」(系統線)と密接に関係している。このため、令和4(2022)年4月1日から「配電部門の自由化」ともいわれる「配電ライセンス」注14制度がスタートするが、この配電ライセンスを活用したビジネスを目指している事業者にとっては、地域マイクログリッド構築支援事業は、新たなビジネス機会として期待されている。
図6 地域マイクログリッド構築に向けた3ステップ
出所 資源エネルギー庁、「地域マイクログリッド構築のてびき」(2021年4月16日)をもとに編集部で作成
構築支援事業の予算および支援事業の状況
表1に、令和2(2020)年度から令和4(2022)年度までの地域マイクログリッド構築支援事業における予算の推移を示す。
表1 地域マイクログリッド構築支援事業の予算の推移
出所 https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2022/pr/en/shoshin_taka_06.pdf
これらの補助金によって、表2および表3に示すように、すでに北海道から沖縄まで全国にわたって、①地域マイクログリッドの導入プラン(マスタープランという名称と同意)作成事業と、②地域マイクログリッド構築事業が進展している。その成果報告書が、SII(環境共創イニシアチブ)注15から発表されている(詳細は同報告書を参照のこと)。
表2 地域マイクログリッド構築支援事業のうちマスタープラン(「導入プラン」)作成事業の状況
出所 SII(環境共創イニシアチブ):平成30年度 補正予算災害時にも再生可能エネルギーを供給力として稼働可能とするための蓄電池等補助金(地域マイクログリッド構築支援事業のうち、マスタープラン(導入プラン)作成事業)、成果報告書(要約版)2020年3月31日
および「令和2(2020)年度地域の系統線を活用したエネルギー面的利用事業費補助金(地域マイクログリッド構築支援事業のうち、マスタープラン(導入プラン)作成事業)」成果報告書(要約版)、2021年5月13日
表3 地域マイクログリッド構築事業(令和2年度、3年度採択分)
参考 SII「交付決定について(複数年度継続事業)、「交付決定について(1次締切)」、「交付決定について(2次締切)」を参照
出所 以下を参考にして編集部で作成
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/017_04_00.pdf
https://sii.or.jp/microgrid03/note1.html
ここでは、地域マイクログリッドの「導入プラン作成事業」と「地域マイクログリッド構築事業」の両事業に取り組んでいる、関電工注16(事業申請者、幹事役)の例を紹介しよう。関電工は、すでに、千葉県いすみ市、東京電力パワーグリッドとコンソーシアムを設立して、「いすみ市地域マイクログリッド構築」を推進している。
▼ 注14
配電ライセンス:エネルギー供給強靭化法に基づいて、新たに創設された配電事業に与えられるライセンスのこと。一般送配電事業者が所有する配電網を、一般送配電事業者以外の事業者に譲渡あるいは貸与し、配電系統ビジネスに新規参入できるようにする国の許可制度のこと。2022年4月1日からスタートする。
▼ 注15
SII:Sustainable open Innovation Initiative、一般社団法人 環境共創イニシアチブ。設立は平成23(2011)年2月22日、地域マイクログリッド支援事業補助金の執行なども行う。
▼ 注16
関電工:本社は東京都港区芝浦四丁目8番33号、会社設立は1944年9月1日。従業員は7,497名、売上高は4,863億円(2021年3月末現在)