[特集]

地域マイクログリッドの最新動向

― レジリエンスを強化した「分散エネルギープラットフォーム」へ ―
2022/04/11
(月)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

千葉県いすみ市の地域マイクログリッドの構築事例

 ここで、千葉県いすみ市における「地域マイクログリッド」の構築状況を紹介しよう。

 図7は、地域マイクログリッド構築事業のプロジェクトに採択された「いすみ市地域マイクログリッド」の構成例である。

図7 千葉県いすみ市の地域マイクログリッドの構成図

図7 千葉県いすみ市の地域マイクログリッドの構成図

開閉器:配電系統における電気の流れをON/OFFするスイッチ(電柱上等に設置)。停電等の問題発生時に、配電網(6,600V)の「ある区間」(上図の赤い×印の区間)を切り離して(開閉器をOFFにする)供給範囲を定め、地域マイクログリッドを稼働させたうえで当該区間の停電を回避する。
出所 以下を参考にして作成
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/017_04_00.pdf
https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/system_kouchiku/013/013_07.pdf

 電力関係の総合設備企業である関電工の千葉支店と、いすみ市および東京電力パワーグリッドの木更津支社の3者で、同マイクログリッドの構築を推進している。

 これは、いすみ市が取り組む「強靭ないすみ市計画」を実現する事業の一環でもある。

 「いすみ市地域マイクログリッド」の構築範囲は、図7に示すように、東京電力パワーグリッドの6,600V配電線(系統線)を利用して、次のような構成となっている。

  1. 防災拠点となる「いすみ市庁舎」、および指定避難所となる「大原中学校」を中心に、
  2. 東京電力PG 木更津支社の系統を開閉器(図7上部×印の2カ所)で区分して一般需要家約30軒と接続する。

 表4に示すように、「いすみ市地域マイクログリッド」には、太陽光発電を計280kW、LPガスエンジン発電機(50kW×2台)、蓄電システム(260kWh)、EMS(需給調整システム)のほか、インバータなども設置される。構築期間は2021年7月〜2023年1月で、運用開始は2023年2月からの予定となっている注17

表4 地域マイクログリッドの設置エリアおよび導入機器・需要家数(2022年3月現在)

表4 地域マイクログリッドの設置エリアおよび導入機器・需要家数(2022年3月現在)

ブラックスタート(Black Start):電力系統においてエリア全域に及ぶ停電(ブラックアウト)が発生した場合に、マイクログリッドは、外部電源で発電され供給されていた電気(系統電力)をまったく受電できなくなってしまう。このような停電を解消するために、(非常用電源を使用して)自力で発電機を稼働させて発電を行い、その電気で他の発電機を稼働(スタート)させること〔注:停電によって停止してしまった他の発電機を動かす(スタートさせる)ためにも、電力の供給が必要なため〕。
出所 関電工他「いすみ市地域を対象とする地域マイクログリッド構築事業について」、2021年7月15日をもとに編集部で作成

 関電工は、この構築事業を通して、前述したエネルギー供給強靱化法に明示された「配電ライセンス」の取得も目指している。

 このため、関電工は、同マイクログリッドの構築を通して、配電事業ビジネスの事業性の評価を行いながら、山積する課題解決に向けて挑戦していく、としている。


▼ 注17
関電工、「千葉県いすみ市における地域マイクログリッドと今後の展開」、2021年12月3日

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