日本の地熱発電の現状と「次世代型地熱発電」への挑戦

― 1基15万kWの超臨界地熱発電を開発へ ―

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2022年9月9日 0:00

世界第4位の活火山数をもち、世界第3位の地熱資源量(ポテンシャル)をもつ日本の地熱発電は、現在、世界第10位という低い導入量となっている。また、2030年に導入される予定の電源構成の目標のうち地熱発電の比率は、1%程度と低い(表1)。このような状況を打開して2050年カーボンニュートラル目指して、日本の次世代型地熱発電の開発が本格的に動き始めた。
政府は「令和4(2022)年度地熱関連予算当初予算案」(注1)に155.4億円(前年度:139.7億円)を計上した。地熱発電に関して、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、次世代の超臨界地熱発電に向けて本格的な調査を開始した。
ここでは、世界と日本の地熱発電の導入状況を見ながら、次世代型地熱発電の最新動向をレポートする。

次世代型の地熱発電技術調査を開始

〔1〕クリーンで燃料代のかからない再エネへの期待

 気候変動による異常気象や、ウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機などを背景に、電力料金の高騰が続いている。さらに日本では、エネルギー自給率が11%(2020年)注2と先進諸国の中で最も低いことから、クリーンで燃料代のかからない再生可能エネルギー注3(以下、再エネ)への期待が大きい。

 日本では、FIT/FIP制度の下で、再エネは「太陽光発電、風力発電、地熱発電、中小水力発電、バイオマス発電」の5つのエネルギー源が対象とされている。

〔2〕NEDOが4拠点で超臨界地熱発電の調査を開始

 日本における再エネは、表1に示すように、2012年7月に開始されたFIT制度(固定価格買取制度)の下で、太陽光発電を中心に普及が拡大し、全電源構成比の中で、2011年度の10.4%から2019年度は18.1%へ拡大し、さらに2030年には、その倍となる36~38%(合計3,360~3,530億kWh)を目指している。これらによって、2030年度の温室効果ガス排出量を46%削減することを目指している。

表1 再生可能エネルギーの導入推移と2030年の導入目標

表1 再生可能エネルギーの導入推移と2030年の導入目標

出所 資源エネルギー庁、「地熱発電の導入促進に向けた経済産業省の取組について」、令和4(2022)年1月

 このような背景の下、最近、日本の再エネの中で、地熱発電のさらなる活用が注目されている。

 例えば、表2に示すように、NEDOは、次世代型の地熱発電技術「超臨界地熱発電」の実現に向けて、2022~2023年度(2024年3月31日まで)に行う「超臨界地熱流体の特性に関する調査」に関する公募を開始した。具体的には、秋田県の湯沢南部、岩手県の葛根田(かっこんだ)と八幡平(はちまんたい)、大分県の九重の4区域で調査を開始することを発表した(2022年8月3日)。

表2 次世代型の地熱発電技術「超臨界地熱発電」の実現に関する調査内容

表2 次世代型の地熱発電技術「超臨界地熱発電」の実現に関する調査内容

出所 NEDO「超臨界地熱流体の特性に関する調査」に係る公募について、2022年8月3日をもとに編集部で作成


▼ 注1
令和4(2022)年度地熱関連予算当初予算案〔155.4億円(前年度:139.7億円)〕
資源エネルギー庁、「地熱発電の導入促進に向けた経済産業省の取組について」令和4(2022)年1月

▼ 注2
資源エネルギー庁、「直近の電力需給・卸電力市場の動向について」(2022年3月25日)の24ページ

▼ 注3
資源エネルギー庁、なっとく! 再生可能エネルギー、「再生可能エネルギーとは

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