2016年10月6日、PwCコンサルティングは「電力・ガス小売市場意識調査2016」の結果を発表した。電力小売自由化によって、利用者は電力会社を自由に選べるようになり、数多くの企業が電力小売に参入している。調査結果は、小売事業者と利用者の意識のずれを浮き彫りにしている。
まず、契約事業者を変更した利用者を対象とした調査の結果から紹介しよう。図1は電力事業者を変更したユーザーが支払っている月額電力料金の違いをグラフにしたものだ。
図1 電力事業者を変更したユーザーが支払っている月額電力料金
出所 PwCコンサルティング
これを見ると、5000円未満が21%で5000円以上8000円未満が36%と、契約事業者を変更した利用者の半数以上が、月々の電力料金が比較的低い利用者だったことが分かる。
図2は、電力会社を変更したユーザーの割合を月額電気料金ごとに示したグラフだ。これを見ると、月々の電力料金が比較的低いユーザーが電力会社に乗り換えた比率が高いことが分かる。
図2 電力事業者を変更したユーザーの割合。ユーザーが支払っている月額電気料金で分類している
出所 PwCコンサルティング
電力自由化を受けて各業者は、多く電力を消費するほど割安になるように料金体系を設計しているが、高額利用者の乗り換えはほとんど進んでいない。業者の目算が外れてしまっていると言える。
では、料金がどれほど安くなればユーザーは乗り換えを検討するのか? その答えとなりそうな調査結果が図3だ。これは、電力会社を変更していないユーザーを対象に、「変更の結果、どれくらい料金が安くなるのなら業者変更を検討するか」を尋ねた結果だ。
図3 どれくらいの料金低下を期待できれば、業者変更を検討するかを尋ねた結果
出所 PwCコンサルティング
割引率が5%では、乗り換えを考えるユーザーはほとんどなく、10%、15%になると乗り換えを検討するユーザーが急増する。2016年4月の電力自由化から、まだ1年も経っていない。実際に乗り換えた人もまだまだ少ないだろう。これからユーザーを増やそうを考えている業者は少し思い切った料金体系を打ち出してみる必要があるかもしれない。
同じ調査をガス事業者について実施した結果が図4だ。やはり割引率が5%では乗り換えを検討するユーザーは少なく、10%になると急増する。ガス自由化は2017年4月の予定だが、他社からのユーザーを奪うことを考えるなら、割引率をよく検討したほうが良いだろう。
図3 どれくらいの料金低下を期待できれば、ガス業者変更を検討するかを尋ねた結果
出所 PwCコンサルティング
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