[特集]

200GWの導入を目指す太陽光発電の「2050年長期ビジョン」

― 太陽光発電協会が公開! 2019年問題と2032年問題にも言及 ―
2017/08/10
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

太陽光発電協会(JPEA)(注1)は、2017年7月3日、2050年に200GW(200ギガワット〔注2〕)の太陽光発電の導入を目指す2050年長期ビジョン『JPEA PV OUTLOOK 2050 〜太陽光発電2050年の黎明〜』を公開した(注3)。
世界の再エネ発電分野への投資は、2015年に従来の化石燃料による発電事業の投資を上回り、なかでも太陽光発電の導入については、国際的にも加速度的に拡大を続けている。これを後押ししているのは、2015年12月にCOP21で採択された「パリ協定」の実現に向けた、温室効果ガス(CO2)削減(低炭素化・脱炭素化)の国際的な流れである。さらに、日本のエネルギー自給率は現在わずか6%と低くく、自給率向上の面からも、燃料費ゼロの太陽光発電などによる再エネ発電への取り組みが急がれている。
ここでは、2050年に太陽光発電200GW導入の可能性を見ていきながら、2019年問題、2032年問題や、今後の新しいビジネスチャンスについて解説する。

2050年には太陽光発電を200GW導入へ

〔1〕再エネ導入を後押しする「パリ協定」

 地球温暖化対策に向けて、2015年12月に全会一致で採択(締約国は196カ国・地域)された、パリ協定(2020年以降の気候変動に対応する国際的な法的枠組み)は、表1に示すように、2016年11月4日に発効された。その後、モロッコ・マラケシュにおいて開催されたCOP22(2017年)では、パリ協定の実施に必要なルール作りを、2018年のCOP24までに完了させ、予定通り2020年に始動する準備が整えられた。

表1 COP21で採択された「パリ協定」(2015年12月)内容と経緯

表1 COP21で採択された「パリ協定」(2015年12月)内容と経緯

※1 パリ協定全文(Paris Agreement)
※2 産業革命以前:パリ協定では「pre-industrial levels」(工業化前のレベル。すなわち産業革命前のレベルのこと)という表現であり、パリ協定で記述されている「pre-industrial levels」の時期は必ずしも明確に規定されているわけではない。ただし、国連組織であるIPCC発行の「Climate Change 2014 Synthesis Report」のAnnex II: Glossary (「気候変動2014年統合報告書」の付属書II:用語集)では、Pre-industrial(See Industrial Revolution):「the periods before and after 1750、1750年前後の期間」とされている(※)。英国で1750〜1850年に起こった産業革命をさして1750年以前とする説もある(※※)。IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change、国連気候変動に関する政府間パネル
https://www.ipcc.ch/pdf/assessment-report/ar5/syr/SYR_AR5_FINAL_full_wcover.pdf
※※https://www.quora.com/What-is-the-reference-temperature-of-pre-industrial-levels
※3 日本は上記のように、2016年11月8日に批准(103番目の締約国)したが、パリ協定の正式な締約国となれるのは、その国が批准してから30日後(すなわち12月8日に発効)と決まっているため、2016年11月15日に開催されたCMA1には間に合わず、日本はオブザーバー参加となった。
出所 各種資料をもとに編集部作成

 日本は、「日本の約束草案」(2015年7月)に基づいて、温室効果ガスを、2030年度までに2013年度比で26%、2050年までに80%の削減を目指すことを閣議決定し、パリ協定の実施に向けた取り組みを行っている。

 近年の日本列島を襲う記録的な大雨などの「異常気象」の要因は、地球温暖化にあるとも言われており、その対策が喫緊の課題となってきている。

〔2〕日本における太陽光発電の累積稼働量の目標「200GW」の見通し

 パリ協定や、2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す閣議決定などを背景に、太陽光発電協会(JPEA)は、図1のように、2050年には日本における太陽光発電の累積稼働量の目標を200GWとする見通しを示した。

図1 2050までの太陽光発電の国内累積稼働の見通し

図1 2050までの太陽光発電の国内累積稼働の見通し

出所 一般社団法人 太陽光発電協会:「JPEA PV OUTLOOK〜 太陽光発電2050年の黎明 〜」、2017年6月

 図2は、図1に示す国内累積稼働量を達成する単年度の出荷量を示したグラフである。図2から、次のようなことが見てとれる。

図2 2050年までの太陽光発電の単年度設置(出荷)容量の推移

図2 2050年までの太陽光発電の単年度設置(出荷)容量の推移

出所 一般社団法人 太陽光発電協会:「JPEA PV OUTLOOK〜 太陽光発電2050年の黎明 〜」、2017年6月

(1)日本では、2012年7月1日から施行されたFIT制度を背景に、2013年から太陽光発電の導入が加速している。

(2)2017年4月1日からは、改正FIT制度が施行され、提案案件(太陽光発電設備の認定を受けているが未着工の案件)の整理が進み、着実な導入へシフトしている。

(3)電力システム改革の進展に応じて、連系線の運用ルールの改訂、広域運用の実施が行われる。具体的には、2020年には電力システム改革の第3弾として、発送電分離が実施されるため、さらに系統運用の効率化が実現される。これに伴って、再エネの市場での扱い量が増加していく。

(4)電力系統を増強する長期計画も含めた整備などが順次実施され、2030年前後からその結果が出始める。

(5)2040年以降においては、遠隔地に設置されている大規模電源を主力とする現行の系統システムから、分散電源を積極的に活用するための新しい系統システムへの転換が進んでいく。

(6)政府のエネルギー自給率向上の取り組みや、2050年におけるCO2排出量80%削減への取り組みを背景に、電源の非化石化や利用エネルギーの転換〔すなわち、あらゆるものを電力を使用して暮らす社会(電力化)への変革〕が必須となってくる。

(7)今後の日本の人口減少をはじめ、省エネ・超高効率な住まいや生産・輸送などの実現によって消費エネルギーは大幅に削減されるが、電力化が進むことによって電力需要の絶対値は増加していく。

 このような動向を見ると、今後、非化石エネルギーの比率を向上させるには、「2050長期ビジョン」で示している太陽光発電の稼働容量(2050年に200GW)でも十分とは言えないほどである。


▼ 注1
JPEA :Japan Photovoltaic Energy Association、一般社団法人 太陽光発電協会

▼ 注2
太陽光発電200GW:100万kWの大型火力発電200基分に相当。ただし、設備利用率は10〜15%程度であることに留意する必要がある。

▼ 注3
http://www.jpea.gr.jp/pvoutlook2050.pdf

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