日本のガス産業の構造
〔1〕ガス事業の分類:一般ガス事業、簡易ガス事業、LPガス販売事業
経済産業省では、電力システム改革のもとに実施される、2016年からの電力小売市場の全面自由化〔平成26(2014)年6月11日「電気事業法等の一部を改正する法律」〕と足並みをそろえるかのように、ガスの小売全面自由化への取り組みも活発化してきた。具体的には、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会のガスシステム改革小委員会で議論が開始(2013年11月)されている注2。
日本のガス産業は、表1に示すように、ガスを家庭や産業の一般的な需要に応じて供給する事業には、主にガス事業法の対象となる「一般ガス事業」(209社、約2,900万件)および「簡易ガス事業」(1,452社、約140万件)と、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(通称「液石法」注3)の対象となる「LPガス販売事業」(21,052社、約2,400万件)がある。
表1 日本のガス産業の構造(データは2013年3月時点)
〔出所 経済産業省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会ガスシステム改革小委員会(第1回)‐配布資料5「ガス事業の現状」、平成25(2013)年11月12日、http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/01_05_00.pdf〕
さらに、例えば一般ガス事業者におけるガス事業売上高注4の上位3社を見ると、東京ガスが1兆2,000億円、大阪ガスが8,000億円、東邦ガスが3,500億円となっている。
〔2〕段階的に自由化が推進されてきたガス事業
ガス事業については、これまで経済産業省において、図1に示すように、1995(平成7)年、1999(平成11)年、2004(平成16)年、および2007(平成19)年の4度にわたって大きな制度改革が行われてきた。その結果、2007年4月から小売自由化の範囲を、年間契約ガス使用量が10万立方メートル以上の需要家まで拡大した。このような改革によって、現在は、図1に示すように、ガス小売は全体の約63%が自由化されている状況である。
図1 日本のガス事業の段階的自由化の経緯
〔出所 エネルギー白書2014(平成25年度エネルギーに関する年次報告」)平成26(2014)年6月資源エネルギー庁、http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014pdf/whitepaper2014pdf_3_4.pdf、http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014pdf/より一部加筆修正して作成〕
今後、図1の右(黄色部)に示す家庭用や小口業務用などのような、年間ガス使用量が10万立方メートル未満の需要家(市場規模:全体の約37%)へのガス小売が自由化されると、ガス業界においてガスの小売全面自由化が達成されることになる。
▼ 注1
Wi-SUNアライアンス:スマートグリッド向け近距離無線通信規格(低消費電力型)である、IEEE 802.15.4g:物理層(PHY)規格やIEEE 802.15.4e:MAC層規格をベースに、インタフェース仕様の策定や、ロゴ認証のプログラム、相互接続性の試験を行う国際的な標準組織。
▼ 注2
ガスシステム改革小委員会の開催状況は以下を参照。
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_8/18.html#gas_system
▼ 注3
液石法=液化石油ガス(LPG)の保安の確保及び取引の適正化に関する法律〔昭和42年(1967年)公布。一般に「液石法」といわれる。
▼ 注4
一般ガス事業者間の売上高の比較(ガス事業売上高)は以下を参照。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/002_haifu.html、http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/002_03_00.pdf