新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力取引所」の役割と課題≪第2回≫

─「新電力」のバランスをとったビジネス展開─

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2014年8月1日 0:00

2016年からの一般家庭への電力小売の自由化を目前に控えて、新電力の参入が急速に増大してきた(2014年7月14日現在:291社)こともあって、一般社団法人 日本卸電力取引所(以下、JEPX)が急速に注目を集めている。そこで前回(第1回、本誌2014年7月号)では、JEPXの設立の目的からその役割や、同取引所で何が行われているかなどを説明した。第2回の今回は、「電力小売の完全自由化」後のビジネス展開をはじめ電力の卸市場やJEPXの市場領域、JEPXの発展史、さらに、今後新電力が取引を行う際のバランスあるビジネス展開が重要となることについてなどを解説する。なお、本記事は、一般社団法人 日本卸電力取引所 総務部長である岸本尚毅氏への取材をベースにまとめたものである。

1. 「電力小売の完全自由化」後のビジネス展開

一般家庭向けを含めた電力小売を2016年に完全自由化する改正電気事業法「電気事業法等の一部を改正する法律」が、2014年6月11日に第186回国会で、可決、成立した注1〔平成26(2014)年6月18日公布〕。これによって、これまで電力10社が地域ごとに販売を独占してきた体制(地域独占体制)を改め、一般家庭などの消費者は契約する電力事業者を自由に選択できるようになる。さらに、電気事業は2018年から発送電分離(発電部門と送電・配電部門を分離すること)が実施される方針が示された(図1参照)。
 
現在は発電から送電・配電、小売までのすべてを同じ事業者が行う一般電気事業者という業態が存在しているが、今後、「発電事業者」「小売事業者」「一般送配電事業者」(TSO:Transmission System Operator)というように事業がそれぞれ分離され、さらに送配電会社は、発電事業や小売事業を兼業してはならないことになる。
 
また、図1に示すように、電力小売の完全自由化後は、発電事業と小売事業には規制はないが、一般送配電事業者(送配電会社、TSO)と発電事業/小売事業、顧客の間には規制が存在することになる。
 
このようなパラダイムシフトの中で、日本卸電力取引所(JEPX、写真1) は、図1右に示すように、発電事業者と供給・小売事業者の取引・仲介者の役割を担うことになる。もちろん図1右に示すように、「発電事業者」と「供給・小売事業者」は、卸電力取引所を介さずに、相対取引(あいたいとりひき。市場を介さずに売買の当事者同士で売買を行う方法)も可能である。
 
 
 
 
 
◆図1 出所
〔「卸電力取引所について」、日本卸電力取引所〕

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