日本は早く世界をキャッチアップする努力を
─編集部:最後に、2020年、2050年に向けた展望についてお聞きしたいと思います。
石田 図4は、積水ハウスが「住」を通じて、国連のSDGs(17の持続可能な開発目標)に対応させて策定した、直接的・間接的な当社の寄与を整理した図となっています。
図4 「住」を通じて社会問題(SDGs)を解決する〔積水ハウスの事業を通じたSDGs(17ゴール)への対応イメージ〕
出所 積水ハウス、「自然エネルギーが企業の競争力を高める」(自然エネルギー財団:企業セミナー)、2018年3月9日
具体的なビジネスとしては、図5に示すように、現在、当社のZEH対応の戸建て住宅は7割(2016年4月〜2017年3月)を超えて日本一となり、累積設置数3万4,648棟と世界最多となりました。目標は2020年に新築戸建ての8割をZEH対応にすることです。
図5 ZEH対応の戸建て住宅が7割を超えた積水ハウス
出所 積水ハウス、「自然エネルギーが企業の競争力を高める」(自然エネルギー財団:企業セミナー)、2018年3月9日
ただし、ZEHを100%にするのは無理があります。理由は、日陰のところもあるし、沿岸地では太陽光パネルがさびてしまうため設置できない場所があるからです。また、戸建て住宅以外の中・高層の賃貸住宅やマンションなども現状では対応できていないからです。
このような課題に取り組みながら、当社がCOP21(パリ協定)直後の2015年に出したパリ協定遵守宣言「2030年までに既存の住宅を含む住まいからのCO2排出量を40%削減する」計画の実現に向けて、粛々と取り組んでいきます。
末吉 積水ハウスさんのような一部の企業努力は別ですが、現在、全体として、かつての日本の名声が地に落ちてしまったと実感しています。地球温暖化について、海外の諸国が急速に展開を始めたため、早くキャッチアップして、世界をリードできるような1群に入ってほしい。そういうことが日本に求められています。日本が、かつて国際的に評価されてきた、環境への優しさなどへの取り組みは、今や昔話です。
世界の現実に目を向け、きちんとしたデータや情報に基づいて、正しい議論をしていくことが必要です。もっと脱炭素化に向けた企業のポテンシャルを引き出す努力をしていかないと、このままでは、日本はビジネス的に世界各国の後塵を拝することになってしまいます。
─編集部:ありがとうございました。
(おわり)
◎Profile(敬称略)
末吉 竹二郎(すえよし たけじろう)
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI) アジア太平洋地域 特別顧問
一般社団法人 グリーンファイナンス推進機構 代表理事
鹿児島県生まれ。
1967年東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。
1989年より米州本部に勤務。ニューヨーク支店長、取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取を経て、1998年6月、日興アセットマネジメント副社長。
2003年7月に国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEPFI)特別顧問、2013年5月に一般社団法人グリーンファイナンス推進機構 代表理事に就任し、現在に至る。
石田 建一(いしだ けんいち)
積水ハウス株式会社 常務執行役員
環境推進部長 兼 温暖化防止研究所長
東京生まれ。工学博士。一級建築士。1985年、工学院大学大学院工学研究科建築専攻(博士課程)を修了後、積水ハウス株式会社に入社。東京設計部に配属され、商品開発部課長、ICT推進部長を経て、2006年 温暖化防止研究所長。2011年 環境推進部長と同研究所所長を兼任。2012年 執行役員、2016年に常務執行役員に就任、現在に至る。
2001年には自邸で環境・省エネルギー住宅賞の国土交通大臣賞受賞。