[特集]

再エネの主力電源化が進む風力発電の最新市場動向

― 世界は累積で540GW、日本は1%未満の3.5GW ―
2018/09/01
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

風力発電システムの仕組み

 風力発電システムは、一般的に、図4に示すように、

  1. 陸上風力発電
  2. 洋上風力発電(着床式と浮体式)注9

に大別されている。

図4 陸上風力発電(左)と洋上風力発電(右の2つ:着床式と浮体式)の設置場所

図4 陸上風力発電(左)と洋上風力発電(右の2つ:着床式と浮体式)の設置場所

出所:NEDO「TSC Foresight」
http://www.nedo.go.jp/content/100880815.pdf をもとに一部修正して編集部で作成

また図5に示すように、風力発電は自動車に匹敵する1〜2万点もの多様な部品でつくられており、そのシステムは次のような仕組みとなっている。

  1. 風エネルギーを風車のローター部〔ブレード(回転羽根)、ローター軸、ハブで構成〕で受けた風力を回転エネルギーに変える。
  2. 回転エネルギーで、発電機を回して発電(発電電圧例:600V〜690V)し、電気エネルギーに変換する。
  3. 次に、発電された電気の周波数をインバータ(電力変換装置)で調整し、電力系統の周波数(例:50Hzまたは60Hz)に合わせる。
  4. さらに、発電電圧を変圧器(注:図6に示す洋上風力発電設備の洋上変電所のように外部にある場合もある)で昇圧(例:690V⇒22kV)し、陸上の電力系統と連携させる。

図5 風力発電の仕組みと風車の構成要素

図5 風力発電の仕組みと風車の構成要素

出所 NEDO「TSC Foresight Vol.27」、2018年7月発行

図6 洋上風力発電システムの主な構成

図6 洋上風力発電システムの主な構成

出所 経済産業省、港湾における洋上風力発電施設検討委員会「洋上風力発電設備に関する技術基準の統一的解説」(2018年3月版)をもとに一部修正して編集部で作成

世界の風力発電の市場動向

〔1〕世界の導入量:累積で539GW、年間で52GW

 ここからは、風力発電に関する世界と日本の市場動向を見てみよう。

 図7は、全世界の風力発電の市場予測を示したものである。図中の表からわかるように、2017年末時点で、世界の風力発電の導入量は、累積で約539GW、2017年の年間導入量で約53GWに達している。

図7 全世界の風力発電の市場予測(2017〜2022年)

図7 全世界の風力発電の市場予測(2017〜2022年)

1GW=1000MW=1000×1000kW=100万kW(100万kWは、ほぼ大型火力発電1基の発電容量に相当)
出所 http://gwec.net/cost-competitiveness-puts-wind-in-front/

 今後、2020年までは、年平均9%程度の成長が見込まれ、2020年には840GW(100万kWの大型火力発電840基分に相当)にも達する勢いである。

 また、最近では世界的に洋上風力発電が注目され、導入が活発化しており、2017年末には、後出の図15に示すように、全世界の累積で18.8GW(18,800MW)にも達していることがわかる注10


▼ 注9
着床式と浮体式:洋上風力発電(Offshore Wind Power Generation)には、着床式(Bottom Fixed Offshore Wind Power Generation)と浮体式(Floating Offshore Wind Power Generation)がある。着床式は海底に直接基礎を設置する方式。浮体式は洋上に浮かんだ浮体式構造物を利用する方式である。なお、水深50m程度を超えると着床式ではコストが割高となるので、水深50〜200m程度の海域では浮体式風力発電機が有利になるといわれている。現在は国際的に着床式が実用化されているが、浮体式も実用化フェーズに入ってきている。

▼ 注10
http://gwec.net/cost-competitiveness-puts-wind-in-front/

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